労災保険 病気・ケガに関する給付
労災保険では、業務災害または通勤災害によるケガ・病気、さらにそれが原因で死亡したときに給付が行われます。ここではけが・病気のときの労災保険給付について確認していきましょう。
●療養補償給付・療養給付
まず、ケガ・病気の治療費用は、療養補償給付(通勤災害の場合は“補償”がとれて「療養給付」。以下同じ)として給付が行われます。
療養(補償)給付は、「療養の給付」として現物給付(金銭ではなく治療そのものを給付する形)で行われます。このため、被災労働者は「療養の給付請求書」に事業主の証明を受け、この請求書を労災指定病院に提出することによって、治るまで無料で診療を受けることができます。緊急の場合などで、やむを得ず労災指定病院ではない医療機関で診療を受けた場合には、「療養の費用請求書」と領収書を事業場の所在地を管轄する労働基準監督署に提出することによって、現物給付ではなく治療代の支給(現金支給)を受けることができます。
労災保険給付の概略(抜粋) | ||
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傷病の 治療費用 |
療養(補償)給付 | 原則100%給付 |
休業による 賃金補償 |
休業(補償)給付+休業特別支給金 傷病(補償)年金・一時金 |
60%+20%給付 |
傷害による 賃金補償 |
障害(補償)年金・一時金 +障害特別支給金・年金 |
障害等級に応じた額 |
死亡による 遺族補償 |
遺族(補償)年金・一時金 +遺族特別支給金・年金 |
遺族の人数に応じた額 |
死亡による 葬祭費用 |
葬祭料・葬祭給付 |
表は左右にスクロールできます。
療養の費用請求書には、医師の証明と事業主の証明を受ける必要があります。これらの請求用紙は労働基準監督署でもらえますが、法令用紙を販売する書店・文具店で購入することもできます。
●休業補償給付・休業給付
また、療養のために働くことができず会社を休み、その間賃金を受けない場合には、休業4日目から「休業(補償)給付」と「休業特別支給金」が支給されます。
休業(補償)給付は、原則として休業1日につき災害発生の直前3カ月の平均賃金日額(給付基礎日額といいます)の6割です。さらに、労働福祉事業として給付基礎日額の2割の休業特別支給金が支給されますので、合計で8割の補償となります。
例えば、平均賃金日額が1万円の被災労働者が30日間休業した場合には、1万円×60%×(30-3日)+1万円×20%×(30-3日)=21万6,000円が支給されます。最初の休業3日間は支給されませんが、業務災害の場合には、労働基準法上、会社がこの3日分の賃金について休業補償する義務を負っています。
休業補償給付は、「休業(補償)給付支給請求書・休業特別支給金支給申請書」に医師の証明と事業主の証明を受け、管轄の労働基準監督署へ提出を行います。請求単位は、何日分ごとという定めはありませんが、1カ月分くらいずつ給与の計算締切日ごとに申請するのがよいでしょう。
さらに、療養開始後1年6カ月経過時点でも治らず、障害の程度が傷病等級に該当する場合には、「傷病(補償)年金」が支給されます。これは休業(補償)給付と同じく平均賃金日額の6割+傷病特別支給金で、障害1級は313日分、2級は277日分、3級は245日分の年金が支給されます。
一方、療養の後に治癒し障害が残り障害等級に該当する場合には、障害(補償)給付として年金または一時金が支給されます。障害等級は程度の重い順に1級から14級までが厚生労働省令で定められており、1級から7級までは年金給付基礎日額の313日~131日分が年金として支給されます。また、8級から14級までの障害の場合には、503日~56日分が一時金として支給されます。
なお、一定の障害によって介護を受けている場合には、介護(補償)給付が併せて支給されます。
【療養の給付の流れ】
2022.04.01 (保坂)