健康保険のしくみ
会社などに勤めているサラリーマンの医療保険は「被用者保険」と呼ばれ、全国健康保険協会管掌健康保険、組合管掌健康保険、各種共済(短期給付)、船員保険(疾病部門)などがあります。制度によって若干の差異はありますが、医療保険としてはほぼ同じ給付内容になっており、ここでは、代表的な健康保険を取り上げます。
●適用事業所
すべての法人事業所および一部例外(以下の「任意適用事業所」参照)を除いた個人事業所に使用される者は、強制的に健康保険の被保険者になります。
【任意適用事業所】
- 下記業種の個人事業所(従業員数不問)
第一次産業(農林水産業等)
サービス業(飲食店、旅館等)
宗教業(神社、教会等) - 常時5人未満の個人事業所(全業種)
※ 令和2年6月5日に公布された「年金制度改正法」により、法務業(弁護士、会計士等)について、常時5人以上の個人事業は令和4年10月に任意適用事業所から適用事業所に変更となります。
●協会けんぽと組合管掌健康保険
協会けんぽとは、協会が保険者として直接運営している健康保険です。
一方、組合管掌健康保険は、厚生労働大臣の許可を受けて設立された健康保険組合が保険者で、保険料率や付加給付などを独自に設定することができます。単一の企業により設立された「単一組合」と複数の同種同業事務所が集まった「総合組合」があります。
●被保険者とは
被保険者本人の手続きは、働き始めたときや辞めたときなどに事業所が行います。保険証が手元に届くまでしばらくかかりますが、被保険者としての権利・義務は勤務と連動していますので、制度上、保険給付は勤務開始日から可能で、また退職翌日からは保険証を返納していなくても給付は受けられません。
●被扶養者とは
被用者保険の特徴は「被扶養者」の存在です。会社員の家族で保険料負担能力がない者は、被扶養者として一定の条件内で認定されると、保険料を負担せずに保険給付を受けることができます。
被扶養者の条件は、主たる生計を被保険者によって維持されている三親等内の親族です。
具体的には60歳未満の家族で年収130万円未満、60歳以上は180万円未満で、かつ、被保険者の年間収入の1/2未満であることが基本条件ですが、実際には事例によって細かく規定がなされています。
被扶養者の増減は「健康保険被扶養者(異動)届」用紙を使い、被保険者の申請によりなされます。保険者によっては細かい基準があったり、添付書類が必要なケースもありますので、詳細は勤務先の人事担当者、または加入している健康保険の窓口(協会けんぽや健康保険組合)に確認してください。
【被扶養者の範囲】
被保険者との生計関係 | 被保険者との世帯関係 | 被保険者との続柄 (健康保険、船員保険) |
---|---|---|
主として被保険者によって 生計をたてている人 |
被保険者と同一世帯に いなくともよい人 |
(1)直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母) (2)配偶者(内縁を含む) (3)子 (4)孫・弟妹 |
被保険者と同一世帯で なければならない人 |
(1)三親等内の親族 (2)内縁配偶者の父母および子 (3)内縁配偶者の死亡後の父母および子 |
●保険料
保険料は給与賞与支払時に自動的に徴収され、事業所が一括して保険者に納付します。その負担は原則として被保険者と事業主が折半ですが、一部に事業主側が多めに負担しているケースもあります。また、40歳以上65歳未満の被保険者からは健康保険料に介護保険料が合算されて徴収されます。
給与分保険料の算出は、毎年4~6月給与額の平均から標準報酬月額を算出し、それに基づいて決められます。標準報酬月額は58,000円から1,390,000円まで50等級にランク分けしたもので、その額に都道府県ごとに設定された保険料率を掛けて保険料を算出します。よって、毎月の給与額に保険料率を掛けたものとは若干異なります。
2022.04.01 (保坂)