自営業者(52歳)です。昨年来、売上が大きく落ち込んでいます。国民年金に加入していますが、収入が減った場合、毎月の保険料が免除される制度があると聞きました。具体的にはどのような制度なのでしょうか。収入がいくらくらいなら免除されますか。
収入に応じて、保険料の全額、4分の3、半額、4分の1が免除されます。対象となる収入の基準は免除の割合が低いほど、緩く設定されています。免除を受けるためには申請が必要ですが、免除の適用を受けずに未納にしておくのに比べ、さまざまなメリットがあります。
4段階の所得基準
自営業者などの国民年金の第1号被保険者は毎月、国民年金の保険料を納める必要があります。その額は1万6610円(2021年度)で、収入に関係なく定額です。そこで、質問のように経済的に保険料を払うことが困難な場合には、納付が免除される仕組みがあります。
免除を受けることができる所得の基準は、全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除の4種類のそれぞれについて定められています(注1)。全額免除は、所得が「(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円」以下であるときに受けられます。扶養親族(注2)が1人の場合は102万円、2人の場合は137万円です。一番緩やかな4分の1免除は、所得制限の基本額は168万円で、扶養家族がいる場合などはさらに一定額がプラスされます(注3)。
けっこう厳しい基準であると感じられるかもしれませんが、これらの額は「所得」であり、「収入」ではありません。すなわち、自営業者の場合、売上などの収入から必要経費を引いた後の金額です。この金額は前年(申請が1~6月の場合は前々年)の所得で判定します(注4)。
また、免除を受けるためには、本人だけでなく、配偶者と世帯主もこれらの所得基準を満たすことが必要です。自分は基準以下であっても、配偶者や世帯主が基準を上回っている場合は免除を受けることはできません。
(注1)全額免除は1万6610円の保険料がまるまる免除されますが、たとえば4分の3免除は、保険料の4分の3が免除され残りの4分の1は納めなければなりません。4つのうちどれかを選択して申請する必要はなく、どれに該当するかは、日本年金機構が所得を参照して判定してくれます。
(注2)所得税法上の扶養親族(配偶者を含む)であり、16歳未満の子どもは該当しません。
(注3)具体的には、基本額に扶養控除や社会保険料控除の額を加えた額となります。
(注4)新型コロナウィルスの影響により収入が減った場合には特例があり、2020年2月以後の任意の1カ月の所得を12カ月分に換算して判定を受けることができます。
過去の滞納分も免除される
免除は自動的に受けられるものではなく申請が必要です。免除の期間は7月から翌年6月の1年間が単位となっていて、この単位ごとに書類提出が必要です。したがって、7月以降に申請する場合は、翌年6月分までの免除をまとめて申請することができます。また、翌年7月以降の分についても、申請時に免除を受けたい旨を書類に記入すれば改めての手続きは不要となります。
一方、すでに過去分の保険料を滞納している場合、2年1カ月前までの分について免除の申請が可能です。2021年8月に申請する場合、2019年7月以降の分の免除が(所得基準を満たしていれば)受けられます。
免除の申請をせずに滞納したままにしておくと、さまざまな不利益が生じます。詳しくは次号で。
Profile
武田祐介
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
ファイナンシャル・プランナーの教育研修、教材作成、書籍編集の業務に長く従事し、2008年独立。武田祐介社会保険労務士事務所所長。生命保険各社で年金やFP受験対策の研修、セミナーの講師を務めている。