健康的な食生活に関心のある人たちから、野菜の健康効果が注目を集めています。今回は野菜が健康に与える効果や効果的な食べ方、保存方法を見ていきましょう。
野菜が必要なわけと健康効果
健康を維持するためには、体調を整える栄養素をバランスよく摂ることが大切です。
野菜にはビタミンやミネラル、食物繊維など豊富な栄養が含まれていて、「タンパク質」「糖質」「脂質」の3大栄養素の吸収や代謝をサポートする働きもあります。つまり、野菜を摂る量が少ないと、栄養の吸収がうまくできないことも考えられるのです。
また、ビタミンやミネラルは、体内では生成できないため、食べ物で補う必要があります。さらに野菜には、「体内に悪影響を与える活性酸素を取り除く」「発がん物質を無毒化する」「免疫力を高める」といった効果も期待できます。
例えば、キャベツや玉ねぎなどの淡色野菜には、米などに含まれる炭水化物をエネルギーに変える手助けをしてくれるビタミン、余分なナトリウムの対外排泄を助け、高血圧等を予防するカリウム、骨や歯の形成に必要な要素であるマグネシウムといったミネラル、整腸効果、血糖値上昇の抑制をしてくれる食物繊維が豊富に含まれています。また、ほうれん草やトマトなどの緑黄色野菜には、活性化酸素の発生を抑え、動脈硬化を予防する効果があると考えられているβ(ベータ)カロテンが豊富です。
こうした野菜の持つ特徴から、生活習慣病を予防し健康な生活を維持するために野菜が効果的だと言われています。
また、多くの研究では、野菜をたくさん食べる人は心臓病、脳卒中、一部のがんに罹る確率が低いという結果が出ているそうです。
一日の野菜を食べる量はどれくらい?
毎日の生活で野菜不足になると心配されるのが、生活習慣病への影響ですが、野菜を毎日適量摂ることで、病気リスクを軽減することができます。では、日本人は一日にどれくらい野菜を食べているのかを見てみましょう。
厚生労働省の「健康日本21(第二次)」では、生活習慣病などを予防し、健康な生活を維持するための目標値として、一日に野菜を350グラム以上食べることを目標にしています。
それに対して、令和元年の日本人の野菜摂取量の平均値は280.5グラム(男性288.3グラム、女性273.6グラム)で、一日あたり約70グラムの野菜不足です(※)。
また、年代別に見てみると、20歳代の人たちの野菜摂取量が最も少なく、一日あたりの野菜の目標摂取量350グラムを満たしている人の割合は、男女ともに20%を切るなど、若年層の野菜不足が顕著で、全体的に見ても日本人は野菜不足というのが現実のようです。
一日に必要な量の野菜を食べるには?
厚生労働省では、1回あたりの食事で、サラダや野菜を主な材料にした小鉢を1皿以上食べることを推奨しています。また、野菜以外にも、きのこ・豆・いも・海藻料理も含めて副菜とし、1日に5~6皿の摂取が目安とされています(下図参照)。
こうしてみると、野菜だけたくさん食べるのではなく、肉・魚・米といった「主食」「主菜」「副菜」を組み合わせて食べることで、必要な栄養素をバランスよく摂り、食生活全般を見直すことにつながることもわかりますね。
野菜をしっかりと食べるコツは?
野菜は、低脂肪・低カロリーという特徴がある一方で、いわゆる「かさ」があるために、比較的満腹感の得られやすい食べ物です。食べる量を増やすためには、毎日の料理でちょっとした工夫が大切です。
例えば、キャベツなどの葉物野菜は、茹でたりレンジで調理して熱を加えることで、「かさ」が小さくなって食べやすくなります。また、ミキサーを使って野菜をジュースにして飲むことも効果的です。
それ以外にも、野菜を食べる量を増やす工夫を見てみましょう。
【カット野菜を活用する】
最近では、スーパーやコンビニで袋に入ったカット野菜が販売されています。洗ったり切ったりの手間が省ける上に、野菜を個別に買わなくてすむので、ある程度の野菜は手軽に食べる量を増やすことができるでしょう。野菜をまるまる1個買って使いきれずに無駄にしてしまうことも避けられますね。
【朝食に野菜を取り入れる】
また、朝食に野菜を取り入れることも、野菜を食べる量を増やすコツの一つです。昼食や夕食だけで必要量を満たそうとすると大変です。朝は出勤などで何かと忙しくなりがちですが、野菜スープを作り置きしたり、市販の野菜ジュースを飲むという方法で、朝の忙しい時間帯でも野菜を摂る工夫をしましょう。
【電子レンジで蒸し野菜を作る】
市販のカット野菜や、自分で刻んだ野菜を水で濡らしたキッチンペーパーで包み、電子レンジにかければ簡単に蒸し野菜が作れます。茹でるよりもビタミンなどの栄養素もしっかりと摂取できます。
また、100円ショップに行けば、電子レンジで温野菜を作れる容器が売っていますので、こういったものを利用するのもよいでしょう。
【野菜料理を作り置きする】
休日など時間があるときに、野菜の「常備菜」はいかがでしょうか。常備菜というのは、一つの食材を、いろいろな料理に応用できるように下準備をしたものです。余りそうな野菜も残さず無駄なく使え、時間がないときにはとても便利です。休日などにまとめて作っておけば、日頃の食事に野菜を添えるのに手間がかかりません。
野菜の保存法は?
野菜はほとんどが水分で構成されていることもあり、鮮度を保ちながら保存することは容易ではありません。常温保存、冷蔵保存、冷凍保存など、野菜の種類によって最適な保存方法を知って、野菜を無駄なく利用するようにしましょう。
【常温保存】
常温での保存では、野菜を乾燥や湿気から護るように新聞紙などで包み、直射日光を避け、風通しのよい冷暗所に保存すると長持ちします。
特に夏場など気温の高い季節は痛みやすいので、ザルやかごなどの通気性の良いもので保存するとよいでしょう。常温での保存に向いているのは、「じゃがいも、白菜、玉ねぎ」などです。
【冷蔵保存】
冷蔵の場合は、冷蔵庫の野菜室での保存が基本になります。ただし、冷蔵庫では野菜が乾燥して水分が抜けてしまい、みずみずしさがなくなることも。そのため野菜室に入れる前に新聞紙やラップで包むなど、野菜を冷やしすぎない工夫も必要です。冷蔵保存に向いているのは「キャベツ、ほうれん草、トマト、にんじん、きゅうり」などです。
【冷凍保存】
先述の通り、野菜のほとんどは水分で構成されているため、冷凍保存はあまりおすすめできません。どうしても冷凍で保存する場合は、一度茹でて加熱してから冷凍庫に保存するようにします。
ラップをした上で保存容器などに小分けして保存するとよいでしょう。生の状態で保存する場合は、野菜の水分をよく拭き取ってから保存します。きのこ類などは保存袋に入れて冷凍保存すると、栄養価の高い状態で日持ちします。
●野菜を食べるときに注意すること
ほとんどの野菜はそのままで食べるには味気ないため、通常の食生活であれば、調味料が必要になることがほとんどです。
ただし、食塩の取りすぎは、高血圧をはじめとする生活習慣病の原因に深く関わってきますので、なるべく素材の味を生かすようにし、塩や醤油の代わりに、酸味(酢やレモン汁)のあるものや、辛味、香味のあるもので代用するとよいでしょう。
また、家庭菜園なども人気となっていますが、私たちにとって、身近な野菜であるトマトやナスでさえ、葉や茎には大量に食べると中毒症状を起こしたりするものもあります。健康のために野菜を採る生活を送っているのに、逆に健康を害してしまったら元も子もありませんので、誤食などをしないように十分に気をつけながら、野菜を活用した健康生活を維持していきましょう。