「貯蓄から投資へ」 —— そんな動きを背景に、にわかに注目されるようになったiDeCoとNISA。セットで扱われることが多いが、両者は似て非なるもの。何がどう違うのか。どちらが有利なのか。いまさら人に聞けないキホンのキ。
自分で運用する変額個人年金
B 最近、iDeCoとかNISAとか、よく目にしますが、そもそも何なのですか?金融商品のひとつなのですか?
A 両方とも個別の金融商品ということではなく、資産形成 —— わかりやすくいえば、お金を貯めるための制度だよ。iDeCoもNISAも、その仕組みのなかで、個別の金融商品、たとえば株式や投資信託などに投資して資産運用するんだ。
B なぜそんな仕組みがあるんですか?
A 投資や資産形成を促す目的で設けられている。両方とも税金上の優遇措置があることで、資産運用にプラスに働くようになっている。
B 資産運用で儲かっても税金がかからない、ということですか?
A 細かい点はあとで説明するけれど、そして両者で優遇措置は少し異なるけれど、おおざっぱにいえば、そういうことだよ。
B ところで、iDeCoもNISAも横文字ですが、そもそもどういう意味なんですか?
A iDeCoは、individual-type Defined Contribution pension planの一部をとってつけられた愛称なんだ。この元の長い名称は直訳すれば「個人型確定拠出年金」となる。
B 年金の一種ですか……。
A 年金といっても公的年金ではなくて私的年金だよ。確定拠出年金は、「拠出が確定している年金」という意味だ。「拠出」というのは掛金のことで、掛金の額が決まっている年金、ということだよ。
B 掛金が決まっているのは当たり前じゃないですか?
A そうともいえないよ。年金制度は大きく2つに分けられる。ひとつは給付つまり年金額が確定しているもの、もうひとつが拠出つまり掛金額が確定しているものだ。
B どういうことですか。
A ひとつ目の「年金額が確定しているもの」というのは、はじめに「いくら年金を払うか」を決めて、それに見合う掛金を設定するんだ。だから、給付は確定しているが、拠出つまり掛金は確定していない。年金資産の運用がうまくいかなかったりすれば掛金を増やすことになるからね。これに対し「確定拠出」は、掛金は確定しているが、給付は確定していない。運用がうまくいかないときは、給付つまり年金額が減ることになる。iDeCoの大きな特徴は、運用次第で年金額が増えることも減ることもあることなんだ。
B 変額個人年金保険のようなものですね。
A そうだね。ただ、変額個人年金は保険会社が運用するのに対し、iDeCoは加入者自らが運用する、つまりどの株に投資するかなどを自分で決める。その点は大きな違いだよ。
60歳になるまで引き出せない
B NISAのほうは何の略ですか?
A Nippon Individual Saving Accountの頭文字をとったものだよ。直訳すれば「日本個人貯蓄口座」となる。
B こちらは貯蓄口座ですか。銀行の口座みたいなものですか。
A 貯蓄 —— Saving —— という言葉が入っているけれど、預金とは違う。銀行や証券会社に専用の口座を作って、株式や投資信託に投資して資産を蓄えるものだ。
B それで、けっきょくiDeCoとNISAはどう違うのですか?
A 端的にいえばiDeCoは私的年金、NISAは投資用の専用口座ということになる。実際上の大きな違いは、iDeCoは年金のためにお金を貯める仕組みだから途中で引き出すことができない。60歳になれば年金として受け取ったり、一時金で受け取ることもできるけれど、それまでは、死亡した場合などを除いて引き出せない。これに対しNISAは年金ではなく出し入れ自由な「口座」だから、いつでも口座内の株式や投資信託を売却して換金して、引き出すことは自由だ。
B iDeCoは60歳になるまで引き出せないというのはハードルが高いですね。
A それはそうだけど、逆にいうとだからこそ確実に老後資金を蓄えることができる、ともいえる。そして、iDeCoもNISAも税制優遇措置があることは共通だけど、ハードルが高い分、iDeCoのほうがより多くの配慮がみられるんだ(以下次号)。