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Web magazine“Present” 広報誌「Present」Web版

2023年3月号掲載

基礎控除導入で精算課税が有利に?

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生前贈与の取扱いが改正される。暦年課税制度では、相続財産への「持ち戻し」が死亡前3年以内の贈与から、死亡前7年以内の贈与に拡大される。一方で、相続時精算課税制度では、暦年課税と同様の110万円の基礎控除が導入され、実質的に110万円までの贈与は非課税になる。

2026年までは影響なし

B 前回の説明で、贈与財産の「持ち戻し」―相続財産への加算が「死亡前7年以内」に拡大され、その対象になるのは2024年の贈与からとのことでした。ということは、今年、2023年に贈与すれば、今回の改正は関係ない、ということですか。

A そういうことになるね。2023年1月1日に贈与して、仮に贈与した人が2026年1月1日までに死亡した場合は、その贈与は「3年以内」なので、相続財産への加算の対象になるが、2026年1月2日以後に死亡した場合は持ち戻しの対象外だ。今までどおり「3年以内」が加算の対象になる。別の見方をすると、2026年までに死亡した場合は、持ち戻しは最大でも3年分(2024年の贈与も3年以内)となるので、改正の影響はない。

B 2024年に贈与した場合はどうなりますか。

A たとえば2024年1月1日に贈与した場合、改正後の取扱いとなる。この場合、贈与者が2031年1月1日までに死亡した場合は、「7年以内」となるので加算対象になる。もっとも2027年1月1日までに死亡した場合は、改正前のルールでも加算対象になるので、今回の改正の影響はないといえるけどね。言いかえると、影響が出るのは、このケースでは2027年1月2日以降に死亡した場合だ。すなわち、2024年以降に行った贈与から「7年以内」加算の対象になるので、2027年以降に死亡した場合から、今回の改正が影響することになる。ただ、完全に7年分まるまる持ち戻すという状況になるのは2031年以降の相続になる。それまでに相続が開始した場合は、2024年以降の贈与が新ルールの対象になるが、持ち戻しの対象は「7年以内」より短い期間となる。

B だんだんと影響が出てくる、と。

A そういうことだね。ただ、そもそも「3年以内」が「7年以内」に拡大されても、贈与してから7年間、無事でいれば持ち戻しの対象から外れるので、生前贈与の効果は生じる。

B 長生きすることが大切ですね。

A 言いかえると、なるべく早く贈与することが重要ということだね。じつは、今回の相続税や贈与税の改正の狙いの一つに、親の世代から子の世代への早期の財産移転の促進があるんだ。それにより経済活動を活性化することがねらいだよ。

110万円は持ち戻し不要

B 相続時精算課税制度でも改正が行われるとのことでしたが……。

A 相続時精算課税制度では、従来から2500万円の特別控除があるが、これとは別に、110万円の基礎控除が導入されるんだ。

B 暦年課税制度と同じように110万円が控除できる、いうことですか。

A そう、これも2024年以降の贈与が対象になるけど、毎年110万円が控除できるので、贈与額が110万円以下であれば申告する必要はない。しかも、この110万円までの基礎控除分は、相続時に持ち戻す必要もない。

B 死亡前7年以内の贈与でも?

A そうだよ。そもそも相続時精算課税制度では、3年以内とか7年以内とかの年数は関係なく、最初の贈与までさかのぼってすべてを相続財産に加算して相続税を計算することになっていた。いわば相続税と贈与税を一体化した課税の仕組みなんだ。これにより、生前贈与したとしても2500万円までなら贈与税は生じず、2500万円を超えた分についてはとりあえず20%の税率による贈与税を納めるが、最終的には相続税と同じ税負担となる。したがって、資産の移転の時期(生前贈与か相続か)によって課税の負担が変わることはない、というのが相続時精算課税制度の仕組みなんだ。

B 逆に言えば、生前贈与をしても、節税にはならない、と。

A 基本的にはそういうことだよ。ところが、今回の改正で、毎年110万円までの贈与は持ち戻す必要はなくなるので、実質的に非課税になる。

B 暦年課税制度では、110万円以下であっても、「7年以内」なら一部(死亡前4〜7年の贈与の合計額のうち100万円)を除き持ち戻すけど、相続時精算課税制度では「7年以内」であっても持ち戻す必要がない、ということですね。そうなると、暦年課税ではなく相続時精算課税を選択したほうが有利ですよね。贈与から7年以内に死亡することもあり得ますから。

A 110万円までの贈与に限れば、そういえるだろうね。ただし、110万円を超える贈与を考えた場合はかならずしもそうとは言えないよ。(次号に続きます)

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