ジョギングは、体への負担も少なく、特別な用具なしに誰もが取り組める運動です。心身への健康メリットから、実践している人も少なくありません。今回は、ジョギングの基本をご紹介します。
ジョギングとランニングは違う?
走る運動といえば、「ジョギング」や「ランニング」ですね。
ジョギングとは、一般的にはゆっくりとした速度で走ることをいいます。
とはいえ、一口にゆっくりといっても、その人の年齢や体力、運動経験などによって感じる速度はさまざまでしょう。
ジョギングでのゆっくりとは、「息が上がることなく」「人と話しながら走れる」程度の速度といわれています。
一方でランニングは、より速いスピードで走るため、一般的には競技のためのトレーニングに向いた運動です。
国立健康・栄養研究所によれば、時速6.4km以上をランニング、それ以下をジョギングと区分しています(※1)。
運動として走るのが初めての人なら、のんびりとした自分のペースで走れるジョギングが最適です。
(※1)改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』 https://www.nibiohn.go.jp/files/2011mets.pdf
ジョギングは「有酸素運動」
話をしながらでも走れる速度で行うジョギングは、運動の種類で分けると「有酸素運動」に分類されます。
有酸素運動とは、筋肉への負荷も軽く、長時間続けられる運動のことです。有酸素運動では、体内の脂質や糖質をエネルギー源として筋肉を動かし、あわせて酸素も消費するといった特性から、ジョギングは健康効果も高い運動といわれています。
健康にはどのような効果が?
ジョギングは、心身に多くのメリットがありますが、代表的なものを紹介します。
◎生活習慣病の予防
高血圧、脂質異常症、糖尿病などの、いわゆる生活習慣病の予防や改善には、有酸素運動が効果的です。
ジョギングを毎日の生活に取り入れれば、血行促進や発汗作用によりこれらの症状の改善が期待できます。また、体の代謝が良くなり、脂肪が燃えやすくなります。
◎ダイエット効果
血液の中にある中性脂肪は、増えすぎると体脂肪(皮下脂肪や内臓脂肪)に変化します。これは体重増加の要因ですから、上手にコントロールしたいもの。
日頃から適切な食生活を心がけることも大切ですが、ジョギングを毎日の生活にルーティーンとして取り入れれば、中性脂肪の増加を抑えることができ、結果的に肥満防止に役立ちます。
◎認知症の予防にもなる!?
加齢により脳が萎縮することで発症する認知症は、誰もが抱える高齢期のリスクです。この認知症の予防にもジョギングなどの運動が効果的であるといわれています。
WHO(世界保健機関)が2019年に公表した「認知機能低下および認知症のリスク低減」のためのガイドライン(※2)によると、身体活動をする人は、しない人に比べて認知機能低下リスクが低くなるといいます。
つまり、認知症発症予防には、ジョギングなどの有酸素運動が有効であると考えられているのです。
(※2)WHOガイドライン『認知機能低下および認知症のリスク低減』
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/column/opinion/detail/20200410_theme_t22.pdf
◎基本的な体力がアップする
若い頃はともかく、何も運動をしないでいると、筋肉の量も減る一方です。
ジョギングである程度の時間を走って筋肉を使えば、筋繊維の活動量が増えて筋肉量増加の効果が期待できます。筋肉量が増えれば基礎代謝も上がり、脂肪が燃えやすくなるという嬉しい副産物もあります。
生涯にわたり体力を維持することで、高齢期の寝たきりなど、介護状態になることを防止する効果も期待できます。
◎ 睡眠の質を高める
「夜なかなか寝付けない」「夜中すぐに目が覚める」など、睡眠の質の低下は日中の眠気に繋がり、仕事に支障が出るのはもちろん、自律神経の働きにも影響があります。
夕食の前か後に行う30分〜1時間程度のジョギングは、適度な疲労感を得られるため睡眠の質を高めるのに効果的です。
ジョギングに限りませんが、適度な運動をすると、セロトニンという脳内物質の分泌が活発になり、睡眠を誘うメラトニンというホルモンの生成をサポートするといいます。さらに、セロトニンは内臓や血管など、自分自身では動かすことのできない部分を司る「自律神経」も整えてくれます。
自律神経を整えることで血流が良くなり、体中に十分な酸素と栄養が運ばれて、健康維持に結びつきます。
雨の日や真冬など、外で走るのが億劫になるときは誰にでもありますね。
そんなときには、室内でできる「踏み台昇降」がおすすめ。文字通り、踏み台の昇り降りを繰り返す運動です。
用意するものは高さ20cm程度の踏み台だけで、やり方も簡単です。
- ❶ 右足で台に昇る
- ❷ 左足も台に昇り両足で立つ
- ❸ 右足を台から下ろす
- ❹ 左足も台から下ろす
この❶〜❹の動作を、4拍子のイメージでリズミカルに繰り返します。
両足が台に乗ったときには、両膝は完全に伸び切るように乗り、降りるときは、最初に乗せた足から降りるのがポイントです。ペースとしては、1分間に60〜70回程度の動作が目安です。1回10分間を1セットとして、1日に2〜3セット行うのがおすすめです。
ジョギングと同じ有酸素運動ですから、脂肪の燃焼効果で、ダイエットにも効果があると思われます。
踏み台がない場合は、自宅の階段でも1段は20cm程度ありますから、そちらでも大丈夫です。
とてもシンプルな運動ですが、筋力や持久力を鍛えられる運動です。
テレビや音楽を見ながら聴きながら、あるいはちょっとしたスキマ時間でもできる踏み台昇降を、ぜひ生活の一部に取り入れてみてください。
ジョギングのためのアイテム
最初に準備するものは、シューズです。走るときの脚への衝撃は、体重の3倍程度といわれています。走ることが基本ですから、普段履くスニーカーではなく、ジョギング専用のシューズを用意しましょう。
走るためのシューズは衝撃を緩和するため、ソール部分に衝撃吸収材を使うなど、脚への負担を和らげる工夫がされています。
初心者は、脚の筋肉がまだ鍛えられていませんので、膝や脚に負担の少ない専用のシューズを選ぶのが基本です。
どのシューズメーカーも、初心者向けには、踵部分のクッション性の優れたものを用意しています、いまはネット通販でも購入できますが、最初の1足であれば、スポーツ用品店で試し履きし、フィット感を確かめましょう。足のサイズや形は人によって千差万別ですから、店で相談しながら購入するのがベターです。
店舗によっては、足の形を詳しく計測して、最適なシューズを提案してくれるところもあります。
ウェアは、通気性の良い速乾性のものを用意しましょう。夏場はもちろん冬場でも長い時間走れば汗はかきますから、体温調整をしやすいものを選びます。
また、予算が許せば、スポーツウォッチを活用すると、走ったときの記録が残せるのでモチベーションが上がります。
走った距離や時間、平均ペース、消費カロリー、心拍数などが記録でき、スマホのアプリと連動させて、運動の記録を管理できるものもあります。
ジョギングの実践方法
では、実際にジョギングはどのように走れば良いのでしょうか。ジョギングはシンプルな運動ですから、こうしなければいけないということはありません。
初心者向けにはいろいろな走り方が紹介されていますが、基本的なジョギングのフォームをまとめました。
ジョギング初心者へのおすすめは、最初は早歩きから始めることです。慣れてきたら、1分間走って1分間歩く、あるいは100m走って100m歩くなど、走りと歩きを交互に繰り返し、徐々に走る時間や距離を伸ばしていきましょう。
最初の目標は、3kmを30分程度で、止まらずに走れるようになることが目安です。
呼吸は自分がいちばん楽な方法で、息が上がらない程度のペースで走りましょう。ゆっくり走った方が、「遅筋」が使われるため、脂肪の燃焼効率は良いといわれています。
注意点としては、「夏場に長い時間走るときは水分を持参する」「寒い日はストレッチで体を温めてから走る」「体調が優れないときは無理して走らない」など、けがの予防のためにも、必要以上に体に負担がかからないようにしましょう。
調査によれば、年1回以上ジョギングやランニングをする20歳以上の人は、2020年で1055万人、実施率は10.2%で調査開始以来最高だったそうです(※3)。
ジョギング習慣ができれば、定期的にカロリーが消費できますから、スイーツやお酒好きの人にとってもメリットは十分といえますね。ぜひ無理のない範囲で、ジョギングを実践してみましょう。
(※3)笹川スポーツ財団「スポーツライフに関する調査報告書」
https://www.ssf.or.jp/thinktank/sports_life/data/jogging_running.html?tab=s02