生命保険の募集に関する主な法律
生命保険契約の募集に係る法律には、特に関連のある重要な法律として次のようなものがあげられます。
保険業法
契約者等の保護を目的として保険会社の運営や監督・募集規制などを規定する法律で、保険契約等に関する商事特別法(商法に優先して適用)でもあります。募集規制等に関する部分は主に募集人の登録や制限・禁止行為(300条)等について規定されています。違反者には、その内容によって行政処分や司法処分があります。
★ 2016年(平成28年)5月29日施行の改正法では、新たに一般的義務規定(保険募集の基本ルール)として「意向把握・確認義務」および「情報提供義務」を保険募集人等の履行すべき義務として規定しています。また、法令遵守のための「体制整備義務」が保険会社だけではなく保険募集人にも課せられ、実態に応じた体制整備が義務付けられました。
消費者契約法
消費者の保護を目的として、2001年(平成13年)4月に施行された法律で、消費者が複雑な商品等を選択する際に正しい判断ができるよう、販売する側に重要事項の説明等を義務付けており、不適切な勧誘による場合の契約の取消しや不当な契約条項の全部または一部を無効とする規定等があります。
金融サービスの提供に関する法律(金融サービス提供法)
消費者の保護を目的として、2001年(平成13年)4月に「金融商品の販売等に関する法律(金融商品販売法)」が施行されました。その後、銀行・証券・保険すべての分野のサービスを仲介可能にするなど、ワンストップ提供に最適化された「金融サービス仲介業」の創設等を目的とし、法律名を「金融サービスの提供に関する法律」として2021年(令和3年)11月1日に施行されました。
この法律では、金融商品の重要事項の説明義務に加えて、適合性の原則※に基づく説明を行うこと、重要事項を説明せずに生じた顧客の損害に対する損害賠償責任、金融商品を販売するための勧誘方針の策定・公表などが規定されています。
個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)
個人情報の保護を目的に適切な個人情報の取扱いのルールとして、2005年(平成17年)4月に全面施行された法律で、個人情報取扱事業者の義務などが規定されています。不適正な取扱いが行われた場合には、その事業者に対して個人情報保護委員会の勧告・命令等の措置がとられます。
金融商品取引法
投資性の強い金融商品を幅広く対象とする横断的な利用者保護法制として、従来の証券取引法を見直した法律で、2007年(平成19年)9月に施行されています。保険業法では、当該契約を特定保険契約と定め、適合性の原則※に基づく適切な勧誘や契約締結前交付書面を交付することなどの本法の規制を準用しています。
犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)
犯罪による収益が組織的な犯罪を助長したり健全な経済活動を阻害したりすることを防止する目的で、2008年(平成20年)3月に完全施行された法律で、金融機関等の特定事業者による顧客の取引時確認、取引に関する記録、疑わしい取引の届出等を義務付けています。
保険法
契約者等を保護するための契約規定を整備し、契約者と保険会社との間の契約ルールを定めた法律で、商法の規定を見直し適用範囲を拡大した独立法として2010年(平成22年)4月に施行されています。保険契約の定義、告知義務、契約解除の取扱い、保険金の支払いに関する保険会社の義務などの規定があります。
※ 「適合性の原則」とは、顧客の知識・経験・財産の状況および契約締結の目的に照らして適切な勧誘を行うことを指しています。特に運用リスクに自己責任が求められる特定保険契約等の募集時や高齢者・未成年者に対する対応では配慮する必要があります。
2022.04.01 (加藤)