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Basic knowledge 地域福祉権利擁護事業と成年後見制度

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地域福祉権利擁護事業と成年後見制度

介護サービスを含めた福祉サービスの利用については、個人の自立支援や利用者によるサービス選択を重視する観点から、利用者がサービス事業者と契約を結ぶことが必要です。しかし、認知症の高齢者などは判断能力が不十分であるために、介護サービスの選択や契約ができず、結果的に適切なサービスを受けられないことも考えられます。このような場合に利用者を援助する制度として、地域福祉権利擁護事業と成年後見制度があります。地域で高齢者の生活を総合的に支援していく拠点である地域包括支援センターにおいても、権利擁護に関する相談業務などが行われています。

●地域福祉権利擁護事業

都道府県社会福祉協議会(社協)が実施主体となり、認知症高齢者、知的障害や精神障害の人を支援する制度が地域福祉権利擁護事業です。援助の具体的内容は、社協の生活支援員による福祉サービスに関する情報提供や助言、サービスの申込手続や契約の代行、金銭管理などです。社協、またはその委託を受けた市町村社協等が、利用者本人の意向を踏まえて支援計画を作成し、本人または代理人と契約を結ぶことが援助開始の条件となります。

●成年後見制度とその特徴

認知症の単身高齢者、家族や親族からの援助を受けられない高齢者が増加しています。判断能力が不十分であるがゆえに日常生活に支障をきたす高齢者等が、介護サービス契約を含めた契約全般に関して、あるいは所有する財産の保全や処分に関して不利益を被らないよう、法的にサポートする制度が2000(平成12)年に改正施行された成年後見制度です。
 従来の本人保護の理念と自己決定の尊重・残存能力の活用・ノーマライゼーション等の理念の調和を目指して、これまでの「禁治産・準禁治産制度」が全面的に改正されました。
 改正された成年後見制度には次のような特徴があります。

  • 従来の法定後見制度のほかに、あらかじめ将来自分の判断能力が不十分となる場合に備えて、契約により後見内容を定め、後見人を確保しておける任意後見制度ができました。
  • 禁治産を「後見」、準禁治産を「保佐」と名称を改めるとともに、判断能力の障害が軽度である者を対象として「補助」制度ができました。
  • 後見登記制度により、代理権または同意権・取消権の付与や代理権の範囲につき、登記事項証明書により証明することとなりました。

●成年後見制度による利用者へのメリット

本人の保護という理念と本人の意思の尊重という理念の調和を目指した制度により、利用者が具体的に受けられるメリットは以下のとおりです。

  1. 精神上の障害により判断能力を欠く常況にあると認められる「後見」の対象者であっても、自己決定尊重の観点から日用品の購入など日常生活に関する行為については、本人に判断がゆだねられることとなりました。
  2. 複数の成年後見人等を選任することが可能となり、財産管理や身の回りの世話など援助の目的に合わせた専門職を選任することができるようになりました。
  3. 法人を成年後見人等に選任できるようになり、長期安定的な援助を実現できる体制が整いました。
  4. 成年後見監督人のみならず、保佐監督人、補助監督人制度が新設され、それぞれの業務遂行に対する監督体制ができました。

【成年後見制度の概要】

対象者 認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等
対象者の状況
  • ・任意後見:判断能力を有する
  • ・補助:精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者
  • ・保佐:精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者
  • ・後見:精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者
援助者 弁護士、司法書士、社会福祉士、親族、個人、行政などが成年後見人、保佐人、補助人・任意後見人となり、財産管理や身上監護に関する法律行為を行う
援助の方法 代理・同意(取消)
援助の内容
(類型により異なる)
  • ・本人への情報提供や助言等
  • ・治療、入院等に関する契約締結や費用支払
  • ・居住する住居確保に関する契約締結や費用の支払いなど
  • ・福祉施設・サービス利用に関する契約の締結、費用の支払
  • ・法律行為としての異議申立て
  • ・日常的な金銭管理(地域福祉権利擁護事業に委託処理する場合もある)
  • ・財産管理
費用
  • ・家庭裁判所が対象者の資力を総合的に判断し決定した報酬
  • ・対象者の財産から、後見人等事務処理費用を支弁

2022.04.01 (保坂)

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