転職・退職のときには資産を移す手続きが必要
公的年金に上乗せする年金を用意できる私的年金の制度のひとつに、企業型確定拠出年金(企業型DC)があります。
企業型DCは、会社が支払ってくれる掛金を自分で運用して、成果を60歳以降に受け取る制度。運用益にかかる約20%の税金が非課税になるうえ、受け取るときも税金の優遇が受けられます。
企業型DCはお得な制度なのですが、転職や退職のときには資産を転職先の企業型DCやiDeCo(個人型確定拠出年金)に移す手続きが必要。転職・退職の翌月から6ヵ月以内に手続きしないと、資産が国民年金基金連合会に自動的に移されてしまいます(自動移換)。
国民年金基金連合会の資料によると、2022年9月末時点の自動移換者の人数は112万6145人。2021年度末時点で自動移換された年金資産の総額は2587億5200万円にのぼります。
年金資産が自動移換されると、運用が行われないため、お金が増えません。昨今の物価上昇の影響で、お金が相対的に目減りしてしまう可能性があります。
自動移換された年金資産には手数料がかかります。具体的には、自動移換されるときに4348円、自動移換中の管理に毎月52円ずつかかり、年金資産から差し引かれてしまうため、自動移換の期間が長く続くほど年金資産が減ります。
さらに、自動移換中は企業型DCの加入期間にもカウントされません。60歳から老齢給付金をもらうには10年以上の通算加入期間が必要ですが、それを満たさなくなることで、年金資産を受け取れる年齢が遅くなる可能性があります。
自動移換を防ぐには、自動移換される前に手続きをすることに尽きます。
転職先に企業型DCがある場合、新たにその会社の企業型DCに加入する手続きが必要です。転職先の指示に従って、手続きを行いましょう。一方、転職先に企業型DCがない場合や、独立などをする場合は、これまでの企業型DCの資産をiDeCoに移換します。自分でiDeCoを利用する金融機関を選び、手続きを行います。
企業型DCの年金資産は自分の老後のために貯めてきた大切なお金です。自動移換によって目減りさせることのないよう、よく確認して、必要な手続きを取るようにしましょう。