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Web magazine“Present” 広報誌「Present」Web版

2023年12月号掲載

ラストラブレター

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このコーナーでは、「わたしたちのくらしと生命保険」をテーマにした公益財団法人生命保険文化センター主催による第60回中学生作文コンクールの入賞作品をご紹介します。

都道府県別賞一等

奈良県 田原本町立田原本中学校
三学年 中村 夢乃(なかむら ゆめの)

私は祖父に会ったことがない。母が十九歳の時に食道ガンで亡くなったからだ。

いつも母から聞く祖父の話は、厳しい中にも優しさとユーモアがあった人柄が伺える。

何より祖父の話になると祖母が涙目になりながら、幸せな表情を浮かべる姿に、祖母と祖父が共に過ごしてきた日々が幸せだったことがわかり、私まで嬉しくなる。

母は四人兄弟で、社会人になったばかりの長男と大学生の次男、短大生の母と高校二年生の妹。

一番お金がかかる時にガンが見つかった。その時にはガンが進行していて、いきなり突きつけられた余命半年という残酷な診断結果に、祖母も兄弟達も悲しみ、動揺するばかりだったらしい。

看護士をしている祖母が祖父を自宅療養する形で、祖父は余生を送った。

治療のため喉を切開し声が出なくなっていた祖父と家族のコミュニケーションは筆談で、祖父が書き残したノートが今も祖母の宝物らしい。その大切なノートを見せてもらったことがこの作文を書こうと決めたきっかけだ。

最初は丁寧な文字で祖父のその時の気持ちや会話の返信が書かれていて、母や祖母の話のように、祖父の人柄が伺えるクスッと笑えるユーモアを交えた文章が続いていたが、次第に文字も震え、文章も短くなり、祖父の痛みや辛さが手にとるようにわかり、読むのが辛くなった。

その中で震える文字で、母の名前や叔父、叔母の名前が書かれていて、その横に、それぞれ金額は違ったが、何百万円と書いてある文章が目にとまった。

「これ、何のお金?」

と祖母に聞くと、子供達が自立するまでにあとどれくらいお金が必要か目算を書いた内容だったらしい。

その文章の後に「ありがとうよろしく」と続き、終わっていた。私は金額を見て驚くと同時に、心配になり、祖母にその後どうなったのか聞いた。

祖父は、祖母や子供達のためにずっと生命保険に加入していたらしい。

「お父さんがかけてくれてる生命保険があるからお金のことは何も心配しなくて大丈夫。」

と、祖父と話し、ほっとした表情で「ありがとうよろしく」と書いたそうだ。祖父はそのやりとりから二カ月後に亡くなった。

その後、母も母の兄弟も何不自由なく学校生活を送り、それぞれ結婚し家族ができて幸せな日々を送っている。お盆やお正月に親族で集まり、祖母の作った料理をワイワイ食べるのが楽しみで幸せな時間だ。

祖父が亡くなった一年後に私は生まれた。私が四歳の頃から、私の母は生命保険会社で働いている。

母が生命保険を販売する仕事をしているということは知っていたが、生命保険に加入する意味や役割まで深く考えたことはなかった。

イギリスでは生命保険のことを「ラストラブレター」と呼ぶらしい。

亡くなった人が愛する家族に最後に送るラブレター。祖母が祖父から受け取ったラブレターのお陰で、母や母の兄弟の幸せがあり、今の私の幸せがあると感じた。

今年もお盆が来る。祖母は今年も、

「早く迎えに行ってあげよう。」

とお墓へ向かう。祖母の表情は十五歳の私から見ても乙女のようで可愛く、母と顔を見合わせて笑ってしまう。

祖母の作った料理を祖父の仏壇の前のテーブルに並べ、孫達みんなで手を合わせる。そして私は心の中でつぶやく。

『じぃじ、私、幸せです。』と。

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