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Web magazine“Present” 広報誌「Present」Web版

2023年6月号掲載

“おもてなし”に宿る日本人独特の感性とは?

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日本人の礼儀正しさや親切心は、しばしば海外でも話題になります。「おもてなし」という言葉に代表される、他者を思いやる日本人の感性などについて見ていきましょう。

日本人が持っている感性が海外から評価される

2011年3月11日に起きた東日本大震災。混乱の中でも互いを助け合いながら避難生活を送る人たちの姿勢や心の持ち方に対して、海外のメディアでは驚きと賞賛の報道が相次ぎ、世界中の人々を感動させました。このように、他人を気遣い、他人に寄り添う心は、日本人が古くから持っている調和や同調の精神に基づいた、独特の感性と言ってもよいかもしれません。

感性とは、「感性が豊かだ」など、主に絵画や音楽といった芸術分野でよく使われる言葉です。では、その意味は何なのでしょうか。「感」は心の動き、「性」は生まれ持った本質という意味です。一般的には、「物事を見たり聞いたりしたときに、心で感じる能力」などと説明されます。

国土交通省の「国民意識調査」の結果を見てみると、日本人が伝統的に大切にしている感性(美意識)については、「他者を尊重し思いやりの気持ちを持つ」がトップに挙げられています。次いで、「伝統的な文化や風習を尊重し、次世代に引き継いでいく」「家族やコミュニティの絆を大切にし、調和と協調を重視する」「自然を畏怖する一方で、自然と共生し、自然を愛でる」といった項目が続いています(図表1参照)。

中でも、「他人(他者)への思いやり」については日本人らしい感性と言えます。自分のことを後回しにしても、他人を尊重し、礼儀や思いやりを大切にすると言われる国民性は、古くから連綿と受け継がれてきたものではないでしょうか。

日本に根づく「おもてなし」の文化

こうした日本人特有の、他人を思いやる感性がもたらすもののひとつに「おもてなし」があります。フリーアナウンサーの滝川クリステルさんが東京五輪誘致のプレゼンテーションの際に発言した「お・も・て・な・し」は、日本人の「おもてなし」の心を世界に印象づけ、2013年の新語・流行語大賞(年間大賞)にも選ばれました。

おもてなしの語源は、「もてなす」という動詞で、漢字では「持て成し」と表します。「何かを使って(持って)、ものを成し遂げる」という意味ですが、それが名詞となり、「お」を付けた丁寧語になって、“おもてなし”という言葉になったと、言われています。

また、もう一つの語源が「表なし」からきたという説です。表がないことから、裏もないということで、表裏のない純粋な心でもてなすという意味になります。

こういったことから、おもてなしを一言で表現するとすれば、「相手の気持ちを察し、敬意を持ち、心をこめて接する」といった意味と言えるでしょう。

源氏物語にも登場する「おもてなし」

おもてなしという言葉は、平安時代には使われていたようです。

紫式部の源氏物語「桐壺」の中にも、「何事の儀式をももてなし給ひけれど」という一文があります。

紫式部が宮中で宮仕えをしていた頃の話ですが、この中でもてなしは、日常や身の回りの世話はもちろん、儀式や年中行事などについてもしっかりと取り計らった、という意味で書かれています。宮中での仕事が続く毎日の中で、粗相のないように、緊張感を持って立ち回っていたことを窺わせる文章です。

このように、千年も前に文学の中で語られていたおもてなしですから、この頃には私たちに受け継がれるおもてなしの感性が宿っていたと想像されます。

「おもてなし」の源流となった茶道

おもてなしは、茶道とも深い関わりを持っています。お茶のルーツについては諸説ありますが、平安時代の初期に、遣唐使や唐への留学僧によってもたらされたと言われています。

お茶を一般に広めた立役者の一人が、戦国・安土桃山時代の茶人、千利休です。禅の精神を重視した「侘び茶」を発展させ、いまにつながる茶道の基礎を作り上げました。


その千利休の言葉に、「一期一会」があります。茶席に望む際には、生涯で一度きりの機会であることを心に命じ、相手に対して誠心誠意尽くすべき、という心得を説いたものとして知られています。

お茶をいれる人も、お茶に招かれた人も、互いに感謝の心を持ち、居心地のよい時間を共有し、末永く良い関係を築くことが大切であるとされました。

ちなみに、千利休はおもてなしの心を「利休七則」としてまとめています(図表2参照)。まさに、おもてなしの本質をあらわす言葉ではないでしょうか。

日本人の美意識「侘び寂び」

茶道から生まれた感性(美意識)に「侘び寂び」があります。これは「簡素で静寂な中に、美しさと心の充足を感じる」という意味で使われることが多く、これも日本人に独特のものと言えるでしょう。

また、侘び寂びは、明白さよりも曖昧さを暗示させることで、美しさなどを表現した言葉でもあります。

茶道が中国から伝わった当初は、盛大な茶会が行われるなど広まりましたが、その後、参加者同士の精神的なつながりが重視され、華やかさとは一線を画す、侘び寂びという独特の文化として発展していきます。

日本の伝統文化「道」とは?

おもてなしの源流として紹介した茶道もそうですが、日本には書道・華道・柔道・剣道といった、“道”がつく伝統文化やスポーツが多くあります。

中でも、茶道・華道・香道は「三大芸道」と呼ばれています。また、「道徳」や「人の道」などにも道という言葉が使われています。

「道」というのは、もとはといえば、中国の思想である道教などから来た言葉です。日本人にとっての道は伝統的に、心身を整え、調和された状態へリードする行動様式として考えられてきました。特に武道の世界では、勝負事以前に礼儀や心構えなどの精神性、その道を突き詰めていくプロセスが重視されるなど、勝敗や技術を重視する西洋にはない、日本独自の価値観と言えるでしょう。

道の精神は、職人などのものづくりにも刻み込まれています。決まった工程を「型」として学び、それを駆使して独自の「技」へと導く過程こそが“道”に通じるという考え方です。


こうして磨かれ、継承された技術は、織物や塗り物などの手間や時間をかけて作られた工芸品にも反映されています。

そう考えてみると、私たちが普段何気なく使っている、車や家電製品などの「モノ」についても、道の精神をベースにした価値観が宿っていると言えるかもしれません。

このように、文化・スポーツ・道具など、道の精神性はとても奥深いものです。そしてその根底に宿るものは、日本人の感性(美意識)にあると考えると、これからも大切に、世代を超えて継承していくべきもと言えるのではないでしょうか。

column おもてなしとサービスの違いは?

「サービス」という言葉は日常的によく使われますが、「おもてなし」と何が違うのでしょう? サービスは、一般的に「相手に満足してもらえるよう、応対や接待をする」といった意味で使われます。つまり、「相手に対する接し方」がサービスの意味と言えそうです。一方のおもてなしですが、相手への接待という意味では同じですが、そこに「心をこめた待遇」が加わります。

この二つを少し違った角度で見るとその違いがよくわかります。サービスは利益(見返り)を得るための奉仕活動であり、受け取るであろう対価にふさわしい応対をすることと言えるでしょう。一方のおもてなしは、相手が期待している(求められている)以上のことを予測して行う奉仕活動 —— 労を惜しまずに相手を歓待する気持ちがおもてなしと言えそうです。

つまり、サービスとおもてなしは、損得が関わっているかどうかの違いとも言えそうですね。

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