子どもの頃から誰もが親しんだ乗り物が、自転車ではないでしょうか。健康意識の高まりや新型コロナの流行により、日常の足やサイクリングだけではなく、通勤に自転車を取り入れる人が増えているようです。自転車通勤の始め方をまとめてみました。
コロナの影響で自転車通勤が増えている
朝の通勤時間帯、都心部などではスーツ姿で自転車に乗る人を見かけることが増えました。通勤手段としての自転車に、関心が高まっていることがうかがえます。
au損害保険が、東京都に住んでいて週1回以上自転車通勤をし、なおかつ勤務先が自転車通勤を認めている男女500人の会社員に行った調査(※1)によると、23.0%(115人)の人が「日本で新型コロナの流行が始まった後に自転車通勤を始めた」と回答しています。
また、自転車通勤をはじめた理由(複数回答)については、「公共交通機関での通勤を避けるため」が95.7%(110人)で最も多く、「運動不足解消のため」44.3%(51人)、「ストレス解消のため」27.8%(32人)、「交通費を節約するため」21.7%(25人)という結果でした。
自転車通勤のメリット・デメリット
自転車通勤のメリットやデメリットについて考えてみましょう。心身の両面に良い影響を与えることが予想される一方、デメリットもありますので押さえておきましょう。
【メリット】
・満員電車のストレスから開放される
仕事が始まる前に、通勤で心身を消耗させてしまっては、生産性が下がってしまいます。自転車なら人と触れ合うこともなく、爽快な気分で一日がスタートできます。
・交通機関の時刻に左右されずに済む
鉄道やバスは、混雑やトラブル、交通渋滞などで遅延の発生は日常のこと。自転車なら、起こりがちな公共交通機関のハプニングに影響されることもありません。
・通勤ルートを自由に決められる
仕事帰りに用事を済ませたいときでも、ルートに縛られず自由に寄り道や買い物が可能です。いつもと違うコースを選ぶことで、新たなお店の発見にもつながるかもしれません。
・健康効果が期待できる
仕事に追われて運動時間の取れない人でも、自転車なら通勤しながら有酸素運動になります。体力向上とダイエット効果も期待できそうです。
【デメリット】
・駐輪場の確保ができないことも
勤務先に駐輪場がなければ、自分自身で公共の駐輪場を探す必要があります。また、自転車通勤を認めていない会社もありますので、会社規則の確認も必要です。
・天候の影響を受けやすい
朝の通勤時は晴れていたのに、帰りは雨に見舞われるなど、自転車通勤は天候の影響を大きく受けることに。近年増えている、ゲリラ豪雨などへの対策も必要です。
・夏場の暑さと日焼け
夏場は気温の上昇で汗をかく量も多くなりますから、着替えの準備も必要でしょう。また、紫外線対策として、日焼け止めや肌を露出させない服装の工夫も必要です。
・事故のリスクに注意
車と一緒に公道を走る自転車通勤は、交通事故のリスクが高くなります。交通ルールを守ることはもちろん、高額な賠償に備えて自転車保険などへの加入も必須です。
自転車はどんな種類がよい?
ひと口に自転車といっても、さまざまな種類があります。もちろん、日常使っているシティサイクルでも大丈夫ですが、どうせならより楽に快適に走れるスポーツタイプの自転車を選ぶとよいでしょう。スポーツサイクルなら、自転車通勤だけではなく、サイクリングなどにも使用可能です。
おすすめなのは、「クロスバイク」または「ロードバイク」です。フレームの素材や変速機などの装備のグレードによって、多くの種類があり金額もさまざまです。自分自身の自転車スタイルや予算に合わせて選ぶようにしましょう。
【クロスバイク】
一見すると、マウンテンバイクのタイヤを細くしたようなスタイルが特徴です。ハンドルは一文字タイプで車体も軽く、初心者でも乗りやすいため、多くの自転車通勤者に使われています。街乗りからサイクリングまでオールラウンドに使えます。
たくさんのメーカーから発売されており、価格帯も10万円以内のものが多く揃っているので、最初の一台としても選びやすいでしょう。
【ロードバイク】
舗装された道路を高速で走るための自転車です。クロスバイクとの一番の違いは、ハンドルの形状です。ハンドルの先端にかけてU字型に曲がる、いわゆる“ドロップハンドル”が大きな特徴です。また、ハンドルの位置も低く前傾姿勢もきつくなり、タイヤはより細く高圧な空気を入れて走ります。
価格帯は10万円以上が中心で、中には数十万円から百万円近い高級タイプまでさまざまです。クロスバイクでスポーツサイクルに慣れてから、ロードバイクにステップアップする人も多くいます。
自転車以外のアイテムも準備!
安心して自転車通勤するために必要な、安全装備や便利なグッズもありますので、予算に応じて取り揃えましょう。
【ヘルメット】
ヘルメットは必ずかぶるようにしましょう。自転車は転倒のリスクがあり、万一のときに頭部を守るためにも必須のもの。警察庁によると、自転車乗用中の交通事故で亡くなった人の約60%は、頭部に致命傷を負っているそうです(※2)。
国内・海外のメーカーから発売されていますが、ヘルメットは国内メーカーのものがおすすめ。海外のヘルメットは、外国人の頭の形状に合わせて作られているため、頭の形が日本人には合わないこともあるためです。店頭で試着して購入しましょう。
【グローブ】
安全装備としてもう一つ用意したいのが「グローブ」です。ハンドルを握るときのグリップ力を確保するとともに、衝撃吸収のパッドが路面の振動を和らげ、転倒したときには手の保護にもなります。夏場は、指なしタイプのものが涼しいでしょう。
【サングラス】
自転車で走ると、風圧や眩しさで目が開けずらくなることも。そんなときにはサングラスが便利です。紫外線、ホコリや虫から目を保護することもできます。レンズのカラーは夜間走行のことも考えると、濃い色のレンズは避けたほうがよいでしょう。
【前後ライト】
夜間や暗い場所を自転車で走る場合は、道路交通法でライトの装着が義務付けられています。周囲をライトで照らすこと以外にも、周囲の人や車に自分の存在を知らせる意味合いがあります。前方だけではなく後方にも発光式のライトを付けるとより安全です。電池式やUSBで充電できるLEDタイプのライトが主流になっています。
【鍵とスタンド】
スポーツサイクルは、シティサイクルのようなサークル型の鍵やスタンドは付いていません。盗難防止や駐輪のためにも、これらのアイテムが必要です。鍵は柵や電柱などにくくりつけることを想定すると、長めのワイヤーロックが便利です。
【泥除け】
雨の日は自転車通勤しないという人がほとんどかもしれません。ただし、雨がやんでいたとしても、泥除けのないスポーツサイクルで水たまりを走ると、背中に泥水が付着してしまいます。スーツで自転車通勤を考えている人なら、泥除けは必須のアイテムです。常時、自転車に装着するタイプでなく、サドルに挟んでつけるタイプの泥除けなら、簡単に着脱できて便利です。
【ベルクロテープ】
意外に見落としがちなのが「ズボンの裾」対策です。スポーツサイクルは、基本的にチェーンガードが付いていないので、ペダルを漕いでいると、チェーンの油でズボンの裾が汚れたり、チェーンに巻きこまれることも。そのためには、「ベルクロテープ」など、マジックテープタイプのベルトでズボンの裾は止めておくようにします。ベルクロテープは、100円ショップなどでも購入することができます。
公道の走り方や注意点は?
自転車通勤を始める前には、事前にスマートフォンの地図アプリなどで、自宅から会社までのルートを確認しましょう。あるいは、ハンドルにスマホを取り付けてサイクリング用のアプリを使えば、その都度最適なルートをガイドしてくれます。
ルート選びの際は、最短距離を選びがちですが、途中に交通量の多い国道を走る場合などでは、事故のリスクも高まります。最近では、自転車専用レーンも整備されつつありますが、まだまだ多くはありません。多少時間はかかっても、交通量の少ない住宅街や、なるべく信号の少ない道を選んで走れば精神的にもゆとりが生まれます。
自転車は道路交通法上では軽車両に当たりますから、車道と歩道の区別があるところでは、車道を走るのが原則です。この場合、ありがちな事故として、駐停車中の車の右側を走るときにドアが開いてぶつかる事故です。なるべく車との距離をとって走ることや、緊急時に対応できるスピードで走る心構えも必要です。
自転車保険も必須に!
車だけではなく、対人事故への備えも大切です。過去に、小学生の乗った自転車が60歳代の女性と正面衝突し、女性は頭蓋骨骨折などで意識が戻らなくなった事故に対して、平成25年7月4日・神戸地裁の判決で9,521万円の高額賠償事例もあります(※3)。
こういった背景から、自治体によっては自転車を乗る際に自転車保険への加入を義務付けています。au損保の調査(※4)によると、全国で23自治体(令和3年6月時点)が自転車保険などへの加入を義務化しています。
自転車保険はコンビニなどでも申し込むことができる他、自転車保険でなくても、自動車保険や火災保険にオプションで付ける「個人賠償責任特約」でも、他人への賠償に備えることができます。これらの保険に加入している人は、特約がついている可能性がありますので、補償内容を確認してみましょう。
自転車通勤のために、あえて専用自転車を用意しなくても、家にあるシティサイクル、いわゆる“ママチャリ”があれば、少しいじるだけでも、意外と快適に走れるようになります。調整するポイントは、「サドルとハンドルの高さ」「タイヤの空気圧」です。
サドルの高さは、座ってペダルに足をのせてペダルが一番下の位置になったときに、膝が軽く曲がる程度に上げてみましょう。通常だと、停止したときの足付きを重視して低めになっているものです。
ハンドルについては、サドルとは反対に下げてみましょう。アーレンキー(六角レンチ)が必要なので、サドルの調整よりも少々手間がかかりますが、下げることで乗車時のポジションが前傾姿勢となり、体重が分散されて体への負担が軽減されます。
また、タイヤの空気圧はタイヤを両サイドからつまんだときに、パンパンになるように空気を入れてみましょう。転がり抵抗が少なくなり、軽快に走れるようになります。
これだけの調整でも、通勤仕様になります。スポーツサイクルを購入する前に、一度試してみてはいかがでしょうか。
※1 au損保HP 東京都の「自転車通勤」に新型コロナが与えた影響を調査
https://www.au-sonpo.co.jp/corporate/news/detail-240.html
※2 警察庁HP 交通安全のための情報
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/toubuhogo.html
※3 警視庁「交通安全情報」
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kotsu/jikoboshi/torikumi/kotsu_joho/bicycle.files/20200316.pdf
※4 au損保HP「自転車保険の加入義務化」ってなに?
https://www.au-sonpo.co.jp/pc/bycle/obligation/