"クラウド"という言葉を耳にすることが増えました。インターネットの成熟とともに、クラウドを使ったサービスが主役になりつつあります。とはいえ、今ひとつ漠然としたイメージで捉えられがちです。今回は、クラウドサービスの基本について見ていきます。
クラウドサービスとは?
一般的に“クラウド”と呼ばれているのは、正確には「クラウド・コンピューティング」と言います。手元のコンピューターで利用していたソフトウェアやデータなどを、インターネットなどのネットワークにつながったコンピューター(サーバー)を経由して使えるようにする、いわばコンピューターの利用形態の一つです。
そもそも「クラウド」とは英語の「雲」のこと。以前から、IT業界ではネットワークにつながったコンピューターを雲で表していたのですが、雲に隠れたコンピューターを利用するといった意味で、クラウドと呼ばれるようになったと言われています。
このように、クラウドの形で提供されるサービスのことを、総じて「クラウド・サービス」と呼ぶようになりました。パソコンやスマートフォンにソフトやアプリが入っていなくても、インターネットにつながる通信環境とウェブブラウザなどがあれば、さまざまなサービスが利用できるため「クラウド・サービス」と呼ばれているのです。
そのクラウド・サービスには、右ページの表のように3つの種類があります。中でもSaaSは、ソフトウェアを提供するサービスでもあり、YahooメールやGmailなど、個人にもおなじみのサービスです。
クラウドサービス3つの種類
SaaS | |
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サース、サーズ | Software as a Service |
インターネットを経由して提供されるサービスです。利用者は、ソフトウェアのパッケージ購入やインストールも必要ありません。電子メールや表計算ソフトなどがブラウザから利用できるようになります。 | |
PaaS | |
パース | Platform as a Service |
前述のSaaSのアプリケーションを開発するための環境を提供するサービスです。データベースや、OSなどのプラットフォームを開発する機能を持っています。低コストでスピーディに開発できる特徴があります。 | |
IaaS | |
アイアース、イアース | Infrastructure as a Service |
ネットワーク機器やサーバーなど、いわばシステムの稼働に必要なインフラを提供するサービスです。自社でサーバーなどの設備を導入しなくても、必要な時に必要なだけサービスを利用できます。 |
クラウドサービスのメリットは?
クラウド・サービスを利用すれば、これまで、コンピューターの中で保有・管理していたソフトウェアやデータが、クラウド経由で利用できるようになります。
そのため、大きく考えると、機器の購入・データ管理・システム構築などから開放され、パソコン周りにかかる費用を抑えることができるなどのメリットがあります。その他、実際に利用する上では、次のようなメリットが挙げられます。
【インストールや更新が不要】
ワープロや表計算ソフトなどを利用するには、ソフトウェアを購入してパソコンにインストールする必要がありました。また、使い続けているうちにさまざまな不具合の修正や新しい機能の追加など、ソフトウェアのアップデートが行われることもあります。
クラウドサービスなら、パソコンのブラウザを利用してインターネット経由で利用できる上に、ソフトウェアのアップデートなど定期的なメンテナンスも、クラウド上のサーバーが行ってくれます。
【どこからでも利用できる】
持ち出したパソコンにソフトウェアが入っていなくても、自分専用のアカウントとインターネットにつながる通信環境があれば、場所を選ばずに利用できます。また、作成したデータも、いちいちUSBメモリーに保存して別の端末に移し替える手間も省ける上に、ユーザー同士でのデータ共有も可能になります。
【データのバックアップが必要ない】
パソコンなどの端末が壊れて、苦労して作ったデータが台無しに……。そんな経験をした人は少なくないのでは? クラウド・サービスのソフトウェアなら、作成したデータは、クラウドのサーバーで自動的にデータをバックアップしてくれます。
また、クラウドのオンラインストレージに保存しておけば、パソコンやスマートフォンが壊れてもデータはクラウドに残るので安心です。
【データの保存容量を気にしなくて済む】
写真や動画をよく撮影する人だと、あっという間にパソコンやスマートフォンの、保存容量に余裕がなくなることもあります。そんなときには、クラウドに保存場所を移しておけば、スマホやパソコンのメモリーなどの容量を気にしなくて済みます。
クラウド・サービス利用上の注意点は?
便利なクラウドサービスですが、インターネットを経由して利用するサービスである性格上、情報漏えいやデータ消失などの注意点もありますので、押さえておきましょう。
【データが外部に漏れるリスク】
クラウドサービスを提供している会社では、セキュリティ対策を施しているとはいえ100%安全とは言えません。契約したサービス提供会社がサイバー攻撃などを受けるとデータが漏洩する可能性もあります。万一のことを考えて、利用の前には保証範囲やセキュリティレベルなどの確認も必要です。
【障害が起きるとデータが消えることも】
クラウド側で、何かしら障害が起きたときなど、預けていたデータの復旧ができなくなることもあります。クラウドサービスとは別の場所に、作成したデータを保存することや、定期的にバックアップを取る習慣も必要です。
【アカウントが悪用される可能性も】
クラウドサービスが、ウイルスの感染などでログインIDやパスワードが盗まれると、不正アクセスや前述のような情報漏えいの可能性もあります。定期的なパスワードの変更や、他のサービスと同じID・パスワードの使い回しを避けるなどの自衛も大切なことです。
身近にあるクラウドサービス
クラウドサービスは企業向け・個人向けに分けられますが、ここでは個人向けのサービスとして提供されているものをご紹介します。
個人向けのサービスは、生活に密着した便利なサービスや、音楽・映像配信など娯楽系のサービス、あるいは副業などに役立つサービスが中心です。
無料で使えるものも多くありますが、有料プランのサービスなら大容量のデータを保存できたり、複数の機器(パソコン・スマホ・タブレット)で利用できるなど、より便利なサービスが揃っています。自分自身の利用シーンを考えて選びましょう。
個人で使える主なクラウドサービス
Yahoo!JAPAN |
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交通機関や車での移動に便利なサービスや、買い物・オークションサイトも用意 | |
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メールから文書作成まで、さまざまなサービスがブラウザから利用可能 | ||
Amazon |
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本や雑誌、音楽・動画などの娯楽系サービスが充実 | |
Microsoft |
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個人はもちろん、ビジネスにも欠かせないエクセルやパワーポイントといったオフィス系のサービスが充実 | |
iCloud |
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iPhoneやMacBookなどが相互に連携し、写真や動画などをネット上のサーバーで共有 |