会社員ですが、病気になり仕事を休んでいます。長期間の療養が必要で、健康保険から傷病手当金の給付を受ける予定です。現在の会社には10年以上勤めていますが、このまま復職せずに退職した場合、傷病手当金は退職後ももらえるのでしょうか。
退職時点で傷病手当金の支給を受けていれば、退職後(現在の健康保険の被保険者資格を喪失したあと)も、引き続き、最長で受給開始から1年6カ月間、給付を受けることができます。
給与の3分の2が最長1年6カ月
傷病手当金は、病気やケガで仕事を休んだ場合に、健康保険から給付されるものです(注1)。支給されるためには、表に示した要件を満たす必要があります。
傷病手当金の概要
支給の要件 | ① 療養のために労務に服することができないこと。 ② 4日以上休業していること (連続した3日間の待期期間が必要) ③ 賃金が払われていないこと (一部が払われている場合は差額支給) |
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支給額 | 標準報酬月額(過去12ヵ月の平均)× 1/30×2/3(1日当たり) |
支給期間 | 支給開始の日から最大で1年6カ月 |
まず、「療養のために働けない」ことについて医師の証明が必要です(所定の書類に医師に記入してもらいます)。3日間は待期期間となり支給されませんが、この3日間は連続していることが必要です。
たとえば、2日休んで、その翌日は出勤、翌日また休んだ、といった場合は連続していないので待期期間は完成しません。また、待機期間のあとも有給休暇扱いで賃金が支払われている場合は、支給停止となります。
支給額は、1日単位で計算され、休んだ日数分が最大で1年6カ月間支給されます。表の算式中の「標準報酬月額」は健康保険などの保険料の算定の基礎となる給与の額のことで、給与の額を段階的退職後の傷病手当金第51回に区切った切りのよい数字に置き換えたものです。その額を30分の1にしたものの3分の2が1日当たりの支給額ですから、かりに1カ月(30日)まるまる休んだ場合は、おおむね給与の3分の2が支給されることになります。
(注1)労働者災害補償保険(労災保険)の対象になる業務災害や通勤災害の場合は労災保険から休業(補償)給付が支給されますので、傷病手当金は支給されません。
出勤したら不支給
傷病手当金は、退職後も継続して給付されます。ただし、そのためには以下の条件を満たしていることが必要です。
- 退職日までに継続1年以上の健康保険の被保険者期間があること
- 健康保険の資格喪失時(退職日の翌日)に給付を受けているか、または受ける要件(図表の①と②)を満たしていること
したがって、退職時にすでに給付が開始されている場合は引き続き支給されますし、退職時にはまだ給付を受けてない場合でも支給されることもあります。
後者の場合、退職時点で要件を満たしていることが必要なので、たとえば退職日に出勤した場合は3日間連続の待期期間の要件を満たしませんので、支給されません(注2)。
なお、退職前に支給申請が済んでいて、退職時点では有給休暇として賃金が支払われていたため、支給停止となっていた場合は、退職により支給停止が解けて(他の要件を満たせば)支給されることになります。
(注2)また、退職後は、断続的に給付を受けることはできません。すなわち、一度(他の会社などで)働いた場合は、その後再び休んでも支給されません。
Profile
武田祐介
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
ファイナンシャル・プランナーの教育研修、教材作成、書籍編集の業務に長く従事し、2008年独立。武田祐介社会保険労務士事務所所長。生命保険各社で年金やFP受験対策の研修、セミナーの講師を務めている。