先月号の本欄で遺族年金が取り上げられていましたが、そこで説明されている年金額は、会社員で厚生年金に入っている人のケースでした。私は自営業で厚生年金には加入していません。国民年金の保険料はきちんと払っていますが、すでに子どもは高校を卒業しています。私に万一のことがあった場合、遺族年金はまったく支給されないということでしょうか。
「18歳到達年度末」までの子どもがいないとのことですから、遺族基礎年金は支給されません。ただし、死亡一時金、寡婦年金が支給される可能性はあります。また、死亡時点では厚生年金保険の被保険者でなくても、かつて厚生年金保険に加入していたことがあれば、遺族厚生年金が支給されることもあります。
遺族基礎年金が受給できない場合は……
先月号でも説明したとおり、国民年金から支給される遺族基礎年金は、18歳到達年度末を迎えるまで(一般的には高校卒業まで)の子どもがいる場合にかぎり支給されます(注)。その額は子どもの数に応じて表のとおり決められています。
死亡時点ですでに子どもが高校を卒業していて、遺族基礎年金の支給対象にならない場合、まったく何も支給されないかというとそうではなく、死亡一時金または寡婦年金が受給できる可能性があります。
死亡一時金は、国民年金の第1号被保険者(質問者のような自営業者などが該当します)で保険料を納付した期間が3年以上あれば、受給できます。その額は保険料を納付した期間に応じて決められていますが、最高でも32万円です(35年以上保険料を納付した場合)。しかも死亡一時金はその名称のとおり、年金ではなく、1回限り支給されるものです。
寡婦年金は、婚姻期間が10年以上の夫が死亡した場合、夫に第1号被保険者として保険料を納付した期間が10年以上あれば、遺された妻に支給されるものです。ただし、支給期間は残された妻が60歳から65歳になるまでの5年間に限られます。その額は、夫がもらえるはずであった老齢基礎年金(死亡時点の加入期間で計算した額)の4分の3です。したがって、最高で58万5675円(=78万900円×3/4)です。
なお、死亡一時金と寡婦年金の両方の支給要件を満たす場合、両方が支給されることはなく、どちらかを選んで受給します。
(注)一定の障害状態にある子どもがいる場合は、満20歳未満であれば支給される。
遺族厚生年金が支給されても……
ところで、死亡時点では国民年金の第1号被保険者であっても、かつて会社勤めをしていて厚生年金保険に加入していたことがある場合は、遺族厚生年金が支給される可能性があります。
ただし、その額は加入期間に応じたものとなりますので、少額にとどまることもありえます。先月号で説明した「加入期間を300月とみなしての計算」は死亡時点で厚生年金保険に加入していた場合に適用されるものであり、そうでない場合は実際の加入期間に基づいて計算された額となります。
Profile
武田祐介
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
ファイナンシャル・プランナーの教育研修、教材作成、書籍編集の業務に長く従事し、2008年独立。武田祐介社会保険労務士事務所所長。生命保険各社で年金やFP受験対策の研修、セミナーの講師を務めている。