公益社団法人生命保険ファイナンシャルアドバイザー協会 Japan Association of Insurance and Financial Advisors

JAIFA公式LINE

公益社団法人生命保険ファイナンシャルアドバイザー協会 Japan Association of Insurance and Financial Advisors

Web magazine“Present” 広報誌「Present」Web版

2022年4月号掲載

新年度の年金、 0.4%減額だが……

この記事を
みんなにお知らせする

公的年金の額がこの4月分から0.4%減額されるというニュースをみました。年金額は毎年4月に改定されるとのことですが、その方法はどのようになっているのですか。物価が下がっているので年金額も下がるということなのでしょうか。

年金額は毎年度、賃金または物価の変動に応じて改定されています。2022年度の年金額は、昨年の賃金変動率(マイナス0.4%)に連動して引き下げられました。

物価の下げ幅以上に減額

年金額は毎年4月に、前年の賃金または物価の変動に応じて改定されます(年金は毎偶数月に前月分と前々月分が支払われますので、実際には6月15日に振り込まれる分から額が変わります)。

年金額改定のルール

  新規受給者 既受給者
賃金変動率が物価変動率を上回る場合 賃金スライド 物価スライド
例:賃金変動率 3%、物価変動率 1%
賃金変動率 1%、物価変動率 ▲1%
賃金変動率 ▲1%、物価変動率 ▲3%
物価変動率が賃金変動率を上回る場合 賃金スライド 賃金スライド
例:賃金変動率 1%、物価変動率3%
賃金変動率 ▲1%、物価変動率 1%
賃金変動率 ▲3%、物価変動率 ▲1%

どちらに連動するかは表のとおり決められています。すなわち、新たに年金を受け取り始める人の年金額は賃金にスライドし、すでに年金を受け取っている人の年金額はケースに応じて賃金または物価にスライドします。

これは、新規受給者の年金額には現役世代の賃金上昇による生活水準の向上を反映させ、受給を始めたあとは、物価上昇による年金額の目減りを避ける、という考えによるものです。

ただし、物価が賃金を上回って変動した場合は、すでに受給している人も賃金にスライドすることとされています。2022年度の改定はこのケースに該当しました。改定の基礎となる前年の物価変動率はマイナス0.2%、賃金変動率はマイナス0.4%で、「マイナス0.2%>マイナス0.4%」であることから、すでに年金を受給している人も賃金スライドとなったのです。

なお、賃金変動率はより詳しく述べると名目手取賃金変動率です。「名目」ですから、これには物価変動率も加味されていることになります。物価が下がった分(マイナス0.2%)に加え、「実質」賃金も下がったので、名目手取賃金変動率のマイナスがより大きくなり、それに連動した改定になったわけです。物価の下げ以上に年金額が減ったということになります。

保険料引上げで手取り減も

マイナス0.4%ということは、かりに年金額が100万円とすると4000円の減額です。減るといってもわずかでたいしたことがないと考える人もいるかもしれません。じつは、このスライド改定以上に年金額が減ることを大きく実感することがあります。

多くの場合、公的年金からは、国民健康保険料、介護保険料や後期高齢者医療制度の保険料が天引きされています。国民健康保険と介護保険の保険料の天引は65歳以上の人が対象、後期高齢者医療制度は75歳以上の人が対象です。

これらの保険料は住んでいる自治体により異なりますが、趨勢(すうせい)としては増加傾向にあります。賃金や物価の変動に応じた改定による減額以上に、保険料の増加による年金の手取り額の減少が大きいことは少なくありません。なお、これらの保険料は前年の所得等に応じて毎年7月に確定しますので、変わるとすれば、通常10月支払分の年金から手取り額が変わることになります。

Profile

武田祐介

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
ファイナンシャル・プランナーの教育研修、教材作成、書籍編集の業務に長く従事し、2008年独立。武田祐介社会保険労務士事務所所長。生命保険各社で年金やFP受験対策の研修、セミナーの講師を務めている。

公式HP https://www.officetakeda.jp/

この記事を
みんなにお知らせする

この記事が載っている号

広報誌「Present」2022年4月号

記事一覧・電子版PDFのダウンロード

JAIFAに入会したい方へ

JAIFAの会員制度についてや入会方法についてご案内しております。
メールフォームでの入会も可能です。