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Web magazine“Present” 広報誌「Present」Web版

2022年12月号掲載

「産後パパ育休」で休みやすくなる?

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10月に「男性版産休」が創設されたというニュースを見ました。どのようなものですか。これにより、育休が取りやすくなるのでしょうか。

新たに創設されたのは、正式には「出生時育児休業」といいます。従来の育児休業制度とは別に新たに導入されたもので、これにより従来の育児休業制度と併せて最大4回に分割して育休を取得できるようになりました。制度的には取りやすくなったといえます。

産後8週間以内に2回

出生時育児休業は、産後8週間以内に、最長4週間まで休業が取得できる制度で、2回に分割して休業を取得することが可能です。この出生時育児休業は、制度上(法律の条文上)は男女いずれも取得できますが、女性の場合、産後8週間は産後休暇の時期に該当しますので、事実上、男性のための制度といえます。そのため、「男性版産休」「産後パパ育休」などと呼ばれています。

従来からある育児休業制度(原則として子どもが満1歳になるまで取得できるもの)も、やはり2022年10月から2回に分けて取得できるように制度が変更されました。したがって、男性の場合、育休を4回に分けて取ることができるようになりました。状況に応じて機動的に休業できるようになり、育休制度の使い勝手はよくなったといえるでしょう。 なお、育児休業制度は企業等に対し法律により義務付けられているものです。「うちの会社は育児休業制度がないので、育休は取れない」ということはありえません。一部の適用除外者を除き、すべての労働者に取得する権利があります。

短い男性の育休期間

出生時育児休業の創設の背景には、男性の育児休業の取得が進まないことがあります。男女別の育休取得率をみると、女性が85.1%であるのに対し、男性は13.97%にとどまっています(令和3年度雇用均等基本調査)。また、女性に比べ男性の取得期間は極端に短くなっています。

グラフを見ると、女性の取得期間は10ヵ月以上が多く(10ヵ月以上が合計で80.2%)、一方で男性はほとんどが3ヵ月未満となっています(3ヵ月未満が合計で89.2%)。

政府は2025年までに男性の育休取得率を30%にする目標を掲げています(2020年5月閣議決定「少子化社会対策大綱」)。出生時育児休業の創設は、この目標のための具体策と位置付けられます。

とはいえ、男性の育休取得がなかなか進まない理由は、制度上の問題以外にもあるようです。職場の風土や、会社や同僚に迷惑がかかるのではないかという奥ゆかしい配慮が取得を躊躇わせることもあるでしょう。

また、経済的な側面も指摘できます。ほとんどの企業では、育児休業中は無給となっています。雇用保険の育児休業給付金はありますが、その支給率は67%(180日経過後は50%)であり、収入はダウンします。そのため、短期間であれば育児休業に替えて年次有給休暇を消化する人も少なくないようです。

Profile

武田祐介

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
ファイナンシャル・プランナーの教育研修、教材作成、書籍編集の業務に長く従事し、2008年独立。武田祐介社会保険労務士事務所所長。生命保険各社で年金やFP受験対策の研修、セミナーの講師を務めている。

公式HP https://www.officetakeda.jp/

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