遺族厚生年金には「中高齢寡婦加算」というものがあって、夫が死亡した場合に残された妻が40歳以上であれば年金額が増えると聞きました。いくらくらい多くなるのでしょうか? また、子どもがいると加算されないそうですが、どのような仕組みなのか詳しく教えてください。
中高齢寡婦加算は、文字どおり中高齢の寡婦(夫と死別した人=未亡人)の遺族厚生年金に加算されるものです。ここでいう「中高齢」とは40歳以上のことで、基本的には夫死亡時に妻が40歳以上の場合に加算されますが、必ずしもそうとは言いきれず、加算の仕組みはちょっと複雑です。
年齢のほかに子の有無も
中高齢寡婦加算が加算されるかどうかは、40歳以上であるかどうかに加え、子がいるかどうかによって決まります(ここでいう子は、年金支給の対象になる子のことで、18歳に到達して最初の3月31日までの間にある子、または満20歳未満の一定の障害状態にある子のことです)。
1.夫死亡時に妻が40歳以上の場合
この場合、中高齢寡婦加算が加算されるのですが、子がいるときは、子が上述の年齢要件を外れるまでは中高齢寡婦加算は支給停止となり加算されません。すなわち、夫死亡時点から加算されるのではなく、子が18歳到達年度末を迎えるなどした場合に、その時点から加算されます。一方で、子がいないときは、夫死亡時から加算されます。
子がいる場合は、遺族厚生年金に加え、遺族基礎年金が支給されます。その見返りとして中高齢寡婦加算は加算されません。子が18歳到達年度末を迎えるなどして遺族基礎年金が支給されなくなると、中高齢寡婦加算が加算される、ということです。なお、中高齢寡婦加算の額は60万円弱(年額)です。妻が受け取る遺族基礎年金は子の数によって異なりますが、子が1人の場合で約100万円です。
2.夫死亡時に妻が40歳未満の場合
この場合、子がいなければ中高齢寡婦加算が加算されることはありません。一方、子がいる場合は、遺族厚生年金に加え遺族基礎年金を受給できますが、子が18歳到達年度末を迎えるなどして遺族基礎年金が支給されなくなった時点で妻が40歳以上であれば、その時点から中高齢寡婦加算が加算されます。
遺族基礎年金受給中は停止
以上をまとめると下表のとおりになります。ポイントは、次のとおりです。
①中高齢寡婦加算は40歳より前に加算されることはない。
②遺族基礎年金を受給している間は加算されない(40歳以降であれば必ず加算されるということではない)。
なお、いずれの場合も中高齢寡婦加算の加算は65歳になるまでです。
65歳になると、妻自身の老齢年金を受給できるようになるので、中高齢寡婦加算は打ち切られます。
また、その名称のとおり、加算の対象になるのは「寡婦」だけであり、妻が死亡した場合に残された夫に支給されることはありません。
Profile
武田祐介
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
ファイナンシャル・プランナーの教育研修、教材作成、書籍編集の業務に長く従事し、2008年独立。武田祐介社会保険労務士事務所所長。生命保険各社で年金やFP受験対策の研修、セミナーの講師を務めている。