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Web magazine“Present” 広報誌「Present」Web版

2021年12月号掲載

「生前贈与加算」のからくりと相続税対策

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生前贈与加算 —— 贈与した財産の価額を相続税の計算時に相続財産に加えて計算する仕組み —— により、死亡前3年以内の贈与は相続税対策にならない、そう前回説明した(2021年11月号参照)。ただし、何ごとにも例外はある。対策として効果が生じるのは……。

贈与してもしなくても

A 贈与から3年以内に贈与者が死亡した場合、その贈与財産を相続財産に加えて相続税を計算する、だから、せっかく贈与しても相続財産を減らすことにはならず、相続税の負担は贈与しなかった場合と変わらない、ということを前回説明した。

B 暦年贈与の場合、「3年以内」の贈与に限って加算するということでしたね。

A そう、だから、暦年課税なら、贈与から3年を過ぎて死亡した場合は、その贈与は相続税対策となる。

B 相続税対策として贈与するなら、暦年課税で行い、少なくとも3年過ぎるまでは長生きしてもらえばいいということですね。

A 人の寿命はわからないから、対策として不確実性はあるけど、「生前贈与は早めにするのがいい」というのはまさにそのとおりということだね。

B 一方で、相続時精算課税による贈与は「3年以内」に限らず生前贈与加算の対象になるから、いくら長生きしても関係ない —— 相続税対策としては意味がない、ということですね。

A それはそのとおりなんだが、じつは、相続時精算課税による贈与であっても —— あるいは暦年課税で3年以内に相続が開始した場合であっても、結果として生前贈与が相続税対策として有効になることがある。

贈与財産が値上がりしたら……

B どういうことですか?

A 贈与した財産が、相続時に値上がりしていた場合は、生前贈与により相続税を減らすことになるんだ。具体例で説明しよう。財産が総額で3億円ある人が、そのうち1億円の土地を子どもに生前贈与したとする。相続時精算課税を選択すると贈与税は1500万円になる。その後、贈与した人 —— 父親が亡くなり相続が開始した。相続人は土地を贈与された子ども1人だけとすると、3億円 —— 相続財産は2億円だけど贈与した1億円も加えて計算する —— に対する相続税は9180万円になるが、すでに払った贈与税1500万円は控除できるので納付すべき相続税は7680万円となる。すなわち、贈与税と相続税の合計は9180万円だ。一方で、もし贈与をしなかった場合、相続財産は3億円だから、相続税は9180万円。生前贈与した場合と税負担は変わらない。

B だから、生前贈与による節税効果はない……。

A ところが、贈与時に1億円だった土地が相続時には2億円に値上がりしていたらどうなるか。贈与した場合の税負担は、贈与税と相続税の合計で9180万円。これは贈与した土地が値上がりしていてもしていなくても変わらない。一方で贈与しなかった場合、相続財産は土地の値上がりで4億円になっていて、これに対する相続税額は1億4000万円になる。したがって、生前贈与により税負担が4820万円減ったことになる。

B なんだか頭が混乱してきました。なんでそうなるんですか。

A 生前贈与加算は、相続時の値段ではなく、贈与時の値段で行うことになっているからなんだ。いまの例でいうと、2億円に値上がりしていても、贈与時の1億円を加算すればいい。したがって、贈与しなかった場合は相続財産が4億円になるのに対し、贈与した場合は3億円ですむ。

B なるほど……、それじゃ、値上がりしそうな財産を贈与すれば相続税対策として効果があるということになりますね。

A それはそうだけど、確実に値上がりする財産があるかどうか。土地でも株でも値段が変わるものは上がることもあれば下がることもある。もし、相続時に贈与時より値下がりしていれば、逆に贈与したことにより税負担が増える。生前贈与なんかしなければよかった、ということになる。価格が変動する資産の生前贈与にはこうしたギャンブル的な部分があることは知っておいたほうがいいよ。

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