今回は、NISAの税制優遇について。iDeCoと異なり、NISAには投資した金額についての所得控除の扱いはないが、一方で投資した株式等の運用益、売却益にかかる税金が完全に非課税になる優遇措置がある。iDeCoにも受取時の優遇措置があるにはあるが……。
通常20.315%がゼロに
A 前回(2022年10月号)、iDeCoの掛金が所得控除の対象になる、という話をしたが、今回はNISAの税制優遇について説明しよう。まず、NISAには所得控除の扱いはない。NISA口座に資金を投入しても、それは所得控除の対象にはならない。
B ということは、なにかほかに優遇措置があるということですね。
A NISA口座で購入した商品 —— 株式や投資信託などの運用益、売却益が非課税になるんだ。
B 通常は課税されるんですよね。
A 株の配当や投資信託の収益分配金には、通常、20.315%の税金がかかる(注1)。この20.315%の内訳は所得税15%、住民税5%で、端数の0.315%は復興特別所得税―東日本大震災の復興に充てるための税金だよ。売却益、つまり買った値段より高く売れた場合には、その差額にも同様に20.315%の税金がかかる。
B それがNISAを利用すればゼロで済む……。
A そういうことだね。たとえば配当を1000円受け取った場合、通常は203円の税金がかかり、手取りは797円になるが、NISA口座ならまるまる1000円を手にできる。また、買った株がいくらに上がっていても、売却益は非課税になる。
B なるほど。NISA口座にはiDeCoのような限度額はあるんですか。
A 年間に投資できる額、すなわち非課税投資額が決められている。じつはNISAには「一般NISA」と「つみたてNISA」の2つがある(注2)。一般NISAの非課税投資額は年間120万円、つみたてNISAは40万円だよ。それぞれ120万円、40万円までの投資についてはその運用益と売却益がゼロで済む。
(注1)20.315%は分離課税の場合の税率。総合課税を選択することもでき、その場合は、税率は所得により異なる。
(注2)この2つのほかにも「ジュニアNISA」があるが、2023年末に廃止されることが決まっていることから本稿では割愛した。
公的年金等控除があるが…
B iDeCoでは、そうした優遇はないんですか。
A iDeCoでも、利子や配当などの運用益は途中で課税されることはない。20.315%の税金が引かれることなく、運用益のすべてが再投資に回ることになる。ただし、最終的に年金または一時金として受け取る場合には完全に非課税というわけではないんだ。
B 最後の段階で税金を取られるということですか……。
A 場合によっては税金がかからないケースもある。つまり優遇措置はあるにはあるが、それに当てはまらない場合は課税されることになる。
B どういうことですか。
A iDeCoから受け取る年金は雑所得として課税の対象になる。ただし、その所得の計算上、公的年金等控除という控除を差し引くことができるんだ。公的年金等控除というのは、文字どおり老齢厚生年金や老齢基礎年金などの公的年金に対する税金の計算上、控除できるものだけど、iDeCoもこの控除を受けることができる。すなわち、公的年金に準じた扱いとなっている。
B 公的年金なみの優遇措置はある、ということですか……。公的年金等控除の控除額はいくらですか。
A 年金をいくら受け取ったか、年金以外の所得がいくらあるかなどにより異なるけれど、公的年金等以外の所得が1000万円以下であれば、65歳以上の人は最低でも110万円だ。
B そうすると、年額110万円以下ならば課税されない……。
A それはそのとおりだけど、問題は、この公的年金等控除は公的年金と共通枠ということなんだ。つまり、iDeCoからの年金が控除額の範囲内であっても公的年金との合計が控除額を超えていれば、そのオーバー分の所得が生じることになる。
B iDeCoから年金を受け取る人はふつう公的年金ももらっていますよね。そうすると実際には課税されることもありえるということですね。先ほど一時金で受け取る、という話も出ましたが……。
A iDeCoは年金制度ではあるけれど、年金にかえて一時金で受け取ることもできる。その場合は、退職所得扱いで、退職所得控除を差し引くことができるんだけど、これも原則として退職金と共通枠なんだ。だから、会社員で退職金を受け取る場合には控除額に納まらず、課税されるケースもあるよ。