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Web magazine“Present” 広報誌「Present」Web版

2023年7月号掲載

株式投資、通常の課税なら…

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NISAでは、株式投資などによる利益が非課税となる。その恩恵はどれほどのものなのか。今回は、NISA口座ではなく通常の口座で取引する場合の課税について解説する。

利益の約20%が税金で

B 前号(2023年6月号)で、非課税扱いのNISAが来年から抜本的に拡充されるということでしたが、NISAではなく、普通の口座で株取引をした場合はどれくらい税金がかかるのですか。

A 株式(注1)投資による利益は、売却益と配当のふたつがある。まず売却益に対する税金から説明しよう。

B 売却益というのは売ったときにかかる税金ということですね。

A そう、買った値段よりも高い値段で売れた場合、その差額に税金がかかる。税率は20.315%で、かりに1株1000円で100株買って、1500円で売ったら、売却益は5万円(500円×100株)、その20.315%である1万円強が税金として取られることになる。

B 20.315%というのは、ずいぶん細かいですね。

A 内訳は所得税が15%、住民税が5%、端数の0.315%は復興特別所得税 —— 東日本大震災からの復興事業に充てる財源となる税金 —— だよ。

B その20.315%は売却時に源泉徴収されるのですか?

A 源泉徴収ありの特定口座で取引をしている場合は源泉徴収される。特定口座でも源泉徴収なしを選択していたり、特定口座ではない一般口座で取引している場合は源泉されないので確定申告が必要になる。その場合、他の所得とは別に計算して税金を算出する分離課税扱いとなり、税率はやはり20.315%だよ。

B 源泉徴収ありの特定口座なら確定申告はしなくてもいいのですか。

A そのとおりだよ。実際には多くの人が源泉徴収ありの特定口座を選択しているんじゃないかな。

(注1)ここでは、上場株式に限って、その課税について解説する。非上場株式の課税は一部取扱いが異なる。また、株式投資信託の課税はほぼ上場株式と同様である。

配当は申告不要だが…

B 配当に対する税金はどうなっていますか。

A 配当については、源泉徴収ありの特定口座であるかどうかにかかわらず、受取時に20.315%が源泉徴収される。

B 売却益と同じ税率ですね。

A そう、内訳も同じだよ。

B で、確定申告もしなくていい?

A しなくてもいい(注2)が、申告したほうがいい場合もあるんだ。

B わざわざ手間をかけて申告するメリットがあるということですか。

A そうなんだ。配当所得の申告は総合課税と分離課税のどちらかの方法を選んで行うんだけど、どちらにもメリットがある。

B 総合課税と分離課税、ですか。

A 分離課税は先ほど売却益のところでも説明したが、他の所得、たとえば給与所得などと合算しないで税金を計算する方法、総合課税は他の所得と合算して税金を計算する方法だよ。

B どう違うのですか。

A 分離課税の場合は、税率が固定されている。20.315%で、そのうち所得税は15%だ。一方、総合課税の場合は、超過累進税率といって課税の対象になる所得が増えれば税率も高くなり、所得税の税率は5~45%だ。したがって、所得がそれほど多くなく、源泉される15%より低い税率 —— 5%または10% —— が適用されるのであれば、総合課税で申告したほうが所得税が少なくてすむことになる(注3)。さらに、総合課税で申告すれば配当控除の適用が受けられ、配当所得の一定割合が税額から控除される。

B なるほど。申告することによって源泉されていた税金が減って、戻ってくるというイメージですね。

A そうだね。一方、分離課税で申告するメリットは、上場株式の譲渡損と損益通算できることだよ。

B 損益通算ってなんでしたっけ?

A 株式の売却損が出たときに、一方で配当所得がある場合に、株式の売却損のマイナスと配当所得のプラスを相殺できる仕組みだよ。それによって配当所得が減ること —— 場合によってはゼロ —— になるので、結果として配当に対する税金が少なくなる。

B それはいいですね。

A ただ、そのためには、配当所得を分離課税で申告する必要がある、ということだ。多くの場合は、源泉徴収されたままで確定申告をせずに放っておいてもいいけど、場合によってはこのように申告したほうが有利なこともある、ということだよ。

(注2)ただし、持ち株割合3%以上の株主の場合は、配当金の額によっては申告不要とすることはできない。

(注3)なお、総合課税の場合、住民税の税率は一律10%である(分離課税の場合は5%)。

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