さまざまな税金のなかでも、相続税は生命保険のセールスでは存在感が大きい。しかし、国の税収全体に占める相続税の割合はわずか4%に過ぎない。それでも相続税に関心が寄せられるのはなぜか。
3分の1は消費税
A 今回は少し大きな、マクロ的な話をしよう。少し前だけど、日本の税収(国税)が2022年度で初めて70兆円を超え、過去最高を更新したというニュースがあった。
B コロナ禍などで経済が低迷していたのに税収は増えているのですね。
A なかでも消費税が伸びているよ。
B 税率が上がったし、物価高騰も影響していますね。
A 約70兆円の税収(2023年度予算)の内訳をみると、一番多いのは消費税で33.7%、つまり3分の1が消費税なんだ(注1)。
B そうでしたか。消費税の負担感はたしかにありますね。
A ついで多いのが所得税で約3割、次が法人税で約2割となっている。消費税、所得税、法人税で全体の約9割を占めている。
B
ほとんどその3つ、というわけですね。
(図1)をみると、相続税はわずか4%なんですね。生命保険のセールスでは、相続税の知識は必須で、相続税は身近な感じがするけれど、税収全体からみるとたいしたことはないんですね。相続税は個々にみればけっこう高額になることもあるのに、ちょっと意外ですね。
(注1)財務省「税収に関する資料 令和5年度租税及び印紙収入予算」による。
相続税の課税割合は10件に1件
A 個人個人が負担する消費税や所得税は、金額自体は相続税に比べれば小さいかもしれないけれど、ほとんどの人が負担しているからね。それに対して、相続税を納める人は限られているし、一生に何回も払う税金でもない。
B 消費税はほぼ毎日負担していますし、会社員で給料をもらっていれば、所得税も毎月払っていますからね。
A 塵も積もれば……というと語弊があるかもしれないが、1件の税額は少なくても全体としては大きいということだろうね。
B 相続税は、どれくらいの人が負担しているのでしょうか。
A 統計をみると、2021年に死亡した人は約144万人 —— つまり144万件の相続が開始された。このうち、相続税の課税件数は13万件強だった。比率にすると9.3%に相続税が生じている(注2)。
B 相続税が生じる相続は約10件に1件ということですね。
A そう、やはり相続税はだれもが払っているというわけではない。ただ、(図2)に示したように、相続税が生じる割合はかつてに比べると増えている。
B 2015年からぐっと増えていますね。それまでは4%程度だったのが倍になっていますね。
A そう、2015年は相続税の増税があった年なんだ。基礎控除が縮小されて、税率もアップした。
B それで相続税の対象になる件数が増えたんですね。
A とくに基礎控除がそれまでの6割に縮小されたことが大きかった。従来であれば相続財産が基礎控除内に収まっていたケースでも相続税が生じるケースが多くなったわけだ。
B 一方で、1件当たりの相続税額は減っていますね。それでも被相続人1人当たり2000万円近くの負担になるんですね。
A 相続税は多くの人が払うわけではないけれど、その額はけっして小さくはないので、対象になる人には関心が高いということだろうね。来年は生前贈与加算の仕組みが改正され、タワマン節税に関わる改正も見込まれるなど、相続税の存在感は —— 税収全体に占める割合は小さくても —— 小さくなることはないだろうね。
(注2)財務省「相続税・贈与税に係る基本的計数に関する資料」による。